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【連載】「音楽家の愉しみ 第6回 おうちごはん」(音遊人2024年夏号 )

 料理は小学校の頃から作っていた。母は、兵庫県の実家で一人暮らしをする祖母の面倒を見るため、ひと月ほど家を空けることがあった。  その間は、大学で教員をしていた父の夕食を作る。研究室の助手さんがレシピ集をプレゼントしてく…

【連載】「音楽家の愉しみ 第7回 ベルリンの夜」(音遊人2024年秋号 )

 二〇二四年六月二十日、パリでの演奏会の翌日、ベルリンに飛んだ。  以前からお世話になっている竹谷サロンでは、ベルリン芸大在学中の新進ピアニスト、秋山紗穂さんとの共演。シューベルトの連弾曲『ロンドイ長調』と『幻想曲へ短調…

【連載】「音楽家の愉しみ 第5回 城崎の夜」(音遊人2024年春号 )

 2021年から、母方の郷里、兵庫県北部に位置する養父(やぶ)市の芸術監督をつとめている。  京都から特急で二時間。八鹿( ようか) 駅で下車して車で五分。とても音響の良いキャパ650席の「やぶ市民交流広場ホール」がある…

【連載】「音楽家の愉しみ 第4回 デュッセルドルフの夜」(音遊人2023年冬号 )

 二〇二三年九月二十四日から一週間パリに滞在し、二回のコンサートに出演した。  パリではいつもアパートを借りるのだが、このときは突然キャンセルされてしまい、仕方なくホテル住まい。併設されているブラスリーがとても美味しく、…

【連載】「音楽家の愉しみ 第3回 十三(じゆうそう)の夜」(音遊人2023年秋号 )

 仕事柄、大阪に行くことが多い。年に一度は阪大会館のコンサートに出演するし、大阪音大は定年退職したものの、神戸女学院の講師はまだ残っているし、芸術監督をつとめる兵庫県養父市(やぶし)に行くための拠点のひとつでもある。  …

【連載】「音楽家の愉しみ 第2回 パリの夜」(音遊人2023年夏号 )

 二〇二一二年一月二十日から二十九日までパリに滞在した。短い期間だったけれど、二十六日夜、サロンで開催されたコンサートを含めて実り多い日々だった。  最後に訪れたのは二〇一八年八月末、ピリオド楽器のためのショパンコンクー…

【連載】「音楽家の愉しみ 第1回 神戸の夜」(音遊人2023年春号 )

 打ち上げのビールが飲みたくて演奏活動をしている、というアーティストは多い。もちろん、客席と一体となって音楽を作っていく喜びは何ものにも変えがたいが、終演後、それではサヨナラと帰ってしまったら喜びも半減するだろう。コロナ…

【連載】響きあう芸術パリのサロンの物語13(最終回)「ヴァランティーヌ・グロス」(岩波図書 2022年2月号)

 「コクトーが撮った29枚の写真」という副題がついた『ピカソと過ごしたある日の午後』(ビリー・クルーヴァー著、北代美和子訳、白水社)は、エコール・ド・パリが蘇る楽しい本である。  一九一六年八月一二日、ピカソと昼食をとる…

【連載】響きあう芸術パリのサロンの物語12「ジャーヌ・バトリ」(岩波図書 2022年1月号)

 ラヴェルの『博物誌』『マダガスカル島民の歌』、ドビュッシーの『恋人たちの散歩道』などを初演しているジャーヌ・バトリは、パリ六区のヴィユ・コロンビエ座で前衛音楽のコンサートを企画し、六人組誕生の立役者の一人となったメゾ・…

【連載】響きあう芸術パリのサロンの物語11「ルメール夫人とプルースト」(岩波図書 2021年12月号)

 出世競争する若者たちはこぞって上流階級のサロンに出入りするが、そのサロンを主催する夫人たちにもまた、出世争いがあった……いうのが、プルーストが『失われた時を求めて』の中で、「薔薇の花の画家」ルメール夫人がモデルの一人と…

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