新メルド日記

専門家が聴くということ。

オリンピックや世界選手権でフィギュアスケートの演技を見ていると、ときどき採点に違和感をおぼえることがある。すばらしい演技だと思ったのに、意外に点がのびない場合である。テレビの解説者が、その理由を説明する。あのジャンプは回転不足だった、ステップで正しくエッジが使えていなかった、スピンの軸がとれていなかった、等々。こちらは納得しつつも、素人目にはよい演技にみえたのに、専門家というのはずいぶん感動に水をさすものだという不満が残る。

クラシックの演奏にも同じようなことが起きる。フィギュアスケートでは素人だが、クラシックではこちらが専門家だから、反対の立場になるわけだ。…

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感動ということ。

ちかごろ、偽ベートーヴェンの件が世間を騒がせている。大物指揮者や作曲家、演奏家、評論家や学者まで巻き込んだ事件。メディアでの注目はもっぱら物理的な聴覚のあるなしに集中しているが、実際は別の意味の「耳」の根幹に関わる事件だった。

我々の演奏世界で言うところの「耳がいい」には3通りの意味がある。ひとつは、いわゆる音の高さや長さを正確に聞き取る耳。いわゆるソルフェージュ能力である。もうひとつは、自分の出している音をよく聴き、よい音か悪い音かを判断できる耳。つまり、自分の演奏を客観的に判断する能力。そして、最後は他人の演奏を聴いたときに、その善し悪しが的確にわかる耳。つまり、審美眼である。…

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フランス音楽マラソンコンサート

3月22日(土)、フランス音楽のセミナー20周年コンサートが無事終了した。

昼の部は12時半開場、13時開始。連弾を含む8組の出演だから、リハーサルも大変。調律終了後の11時から各組8分ずつの練習で、椅子をなおすだけで終わってしまいそうだ。

私は演奏前に各出演者と曲目の簡単な紹介をする。昼の部には、某大手銀行の取締役さんとか、大企業のエリート社員さんも出演している。…

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イヴォンヌ・ルフェビュールと審美眼

3月15日に開催された安川加壽子記念会コンサート「フレンチ・ピアニズムの系譜」は、昼の部が満員札止め、夜の部も盛況のうちに終了した。
1921年、生後14ヶ月でパリに渡り、1937年に第2次世界対戦の勃発で帰国を余儀なくされた安川先生の先輩や同年代、少し年下のフランスのピアニストたちの演奏映像を集めて紹介する催しである。東京オペラシティリサイタルホールにプロジェクターと大型スクリーンを設置し、私が解説しながら動画を放映した。…

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2014年前半の予定

メルド日記愛読者のみなさん、明けましておめでとうございます。
2014年も半月をすぎてしまったが、今年前半の予定をお知らせしよう。

ちょうど、1月25日刊行の中公文庫『我が偏愛のピアニスト』の見本が届いたところである。海老彰子さん、岡田博美さん、小川典子さん、小山実稚恵さん、花房晴美さん、柳川守さんなど日本人ピアニスト9人にインタビューしたものをまとめ、最後に同級生の練木繁夫さんとの対談を加えたもの。…

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新メルド日記

MERDEとは?

「MERDE/メルド」は、フランス語で「糞ったれ」という意味です。このアクの強い下品な言葉を、フランス人は紳士淑女でさえ使います。「メルド」はまた、ここ一番という時に幸運をもたらしてくれる、縁起かつぎの言葉です。身の引きしまるような難関に立ち向かう時、「糞ったれ!」の強烈な一言が、絶大な勇気を与えてくれるのでしょう。
 ピアノと文筆の二つの世界で活動する青柳いづみこの日々は、「メルド!」と声をかけてほしい場面の連続です。読んでいただくうちに、青柳が「メルド!日記」と命名したことがお分かりいただけるかもしれません。

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