【連載】「PICK UP 夏至の夜を爽やかに」(芸術新潮 2014年7月号)

メンデルスゾーン:劇付随音楽『真夏の夜の夢』全曲

オクタヴィア3000円(税別)
青柳いづみこ選・文

シェイクスピアの『真夏の夜の夢』。アテネ近郊の森に住む妖精王オベロンとその妃ティタニアをめぐるドタドタ劇を、いたずら好きの妖精パックがさらにひっかきまわす。

「真夏」だから8月かと思いきや、実は梅雨まっさかりの時期らしい。ヴァルプルギスの夜と同じように、夏至の夜には妖精の力が強まり、祝祭が催されるという言い伝えがある。戯曲を上演する際の付随的なものとして書かれたメンデルスゾーンの音楽も、軽やかでちょっとあやしげで、妖精や小悪魔が跳梁跋扈する幻想世界を活き活きと描き出す。

通常は音楽のみを抜き出して演奏されることが多いが、このアルバムでは、17歳のときに作曲した「序曲」、有名な「結婚行進曲」はじめさまざまな楽曲をはさんで、戯曲部分も収録されている。松田聖子のヒット曲の作詞で知られる松本隆の台本、七色の声をあやつる檀ふみのナレーションで、物語と音楽を同時に楽しめるしゃれたアルバムになった。

2014年6月29日 の記事一覧>>

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