ジェローム・コレアス指揮
アンサンブル・レ・パラダンマルティン・オロ(C-T)ほか
『フランチェスコ・カヴァッリ:歌劇「オルミンド」全曲』
マーキュリー4000円(税別)
青柳いづみこ選+文
モロッコの四角関係
17世紀ヴェネツィアで一世を風靡したフランチェスコ・カヴァッリのオペラ。バックはヴィオラ・ダ・ガンバやバロックハープ等からなる古楽器バンドで、ひなびた音色が魅力なのだが、ドラマじたいは情念たっぷりに展開される。
モロッコ王の若いお妃にはオルミンドとアミーダという2人の恋人がいる。そこに、隣国の王女であるアミーダの元カノが押しかけてきて、彼は自分のものだと主張する。お妃は「私は2人とも好き、かわりばんこに愛を捧げますわ」と公言するしで、まあ大変。
配役もすごい。オルミンド役は今売り出し中のマルティン・オロ、アミーダはベテランのハワード・クルック。名カウンターテナーのドミニク・ヴィスは、お小姓役でさすがの名演技。女性陣も名手ぞろいで、歌声はあくまでも澄みきって装飾はあくまでも軽やか。典雅な音楽と愛憎劇があいまってぞくぞくするような効果をあげている。