【連載】「PICK UP 亜麻色の誘惑」(芸術新潮 2015年3月号)

リリアナ・ファラオン、マガリ・レジェ、マリー=アンジュ・トドロヴィッチ他
『ドビュッシー:歌曲全集』キングインターナショナル(オープン価格)

青柳いづみこ選+文

亜麻色の誘惑

フランス近代の作曲家クロード・ドビュッシーは髪フェチで、作品にも髪を扱ったものが少なくない。ピアノの名曲「亜麻色の髪の乙女」もそのひとつで、もとになった詩には、金茶色(ブルネット)の髪とさくらんぼのような唇を持つ少女への想いが歌われている。

実は、ドビュッシーは若いときに同じ詩で歌曲も書いているが、長いこと楽譜も出版されず、誰にも歌われることがなかった。

やはり最近完全な形で発見された「弓」という歌曲もある。デカダン詩人シャルル・クロが書いた詩は、死んだ恋人の遺言で、彼女の髪の毛でヴァイオリンの弓を作るという不気味な内容だが、音楽は実にロマンティック。4枚組のこのボックスには、そんな珍しい作品も含めたドビュッシーの全歌曲が収録されている。

ピアノ伴奏は、ドビュッシー愛蔵の名器ブリュットナーを修復したもの。独特のにじんだような響きが、聴き手を夢の世界に誘ってくれる。

2015年2月26日 の記事一覧>>

より

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