ドビュッシーをより深く知るレクチャーコンサート
1月31日(土)汐留ベヒシュタイン・サロンにて、青柳いづみこさんの新著『どこまでがドビュッシー?』出版記念のレクチャーコンサートが開催された。ピアノはドビュッシーが愛用したと言われる、ベヒシュタインのフルコンサート。残念ながら共演予定の高橋悠治さんが発熱のため欠席となり、青柳さんがひとりでお話と演奏をし連弾では藤岡由記さんが代役を務めた。青柳さん自身も高橋さんの欠席を大変残念がっていたけれど、さすがの話術で満員の聴衆をぐいぐい引き込んでいった。
ドビュッシーが構想していたピアノ曲〈象たちのトーマイ〉。このアイディアをイギリスの音楽学者ロバート・オーリッジがバレエ《おもちゃ箱》の素材を使って再構築し、ドビュッシー作品として発表した。しかし、これはドビュッシーなのだろうか?というところから出発し、さまざまな角度から「どこまでがドビュッシー?」ということを分析していく。ドビュッシーはそもそも楽譜に細部を書くのを面倒くさがったり自作の演奏では難しい部分を簡略化して弾いていた、つまり作曲家の立場からしたら作品の肝は細部には無い!?……ドビュッシーはみずから自作を引用して作曲していた、それを実演で比較……などなど。「ドビュッシーらしさとは?」について考える、非常におもしろい一時間となった。
作曲家としてのグールドや佐村河内問題などにも言及し、「どこまでデフォルメしたらその音楽に聞こえなくなるのか?」ということを考える本書も実に奥深く痛快だ。音楽愛好家の必読の一冊と言えよう。