二〇二四年一二月一日(日)は燕三条でコンサート。前日の一一月三〇日(土) 午後から現地入りし、会場のまちやまサイエンスホールでたっぷり二時間リハーサル。
使用楽器は、一九三〇年製のフランスのピアノ、エラール。『昔の歌』をレコーディングした森田工房の一九二七年製や、迎賓館赤坂離宮の一九〇六年製と同じく九〇鍵モデル(通常は八八鍵)の大変珍しい楽器だ。
九〇鍵モデルのエラールは低音が豊かに響く上に、高音は透明な輝きが美しく、演奏予定の楽曲にぴったりだ。
一九三一年には華族会館で、折から来日中のフランスのピアニスト、アンリ・ジル=マルシェックスが演奏している。三二年に燕三条東高等学校に納品されたが、一九九二年以降は演奏の記録がなく、廃棄寸前のところをNPO法人の永桶康子さんによって救い出され、修復されたという。
九〇鍵モデルは低音が豊かに響く上に、高音は透明な輝きが美しく、演奏予定の楽曲にぴったりだ。調律師さんと綿密に打ち合わせした後、新潟在住の友人と会食の約束をしていたのだが、東京の自宅を出る際にスマートフォンを忘れてきてしまった・・・。
何もかもスマホに頼り切りの昨今。お店の名前も待ち合わせ場所も彼女のメールに記されているが、ノートパソコンもアイパッドも置いてきたので、肝心のメールが読めない。
必死で頭の中を探す。お店は懐石料理、予約は六時半。待ち合わせは・・・新潟駅から何番かのバスに乗ったどこかの停留所・・・・くらいしか思い出せない。
友人の電話番号も、固定も携帯も覚えていない。メールアドレスも住所も・・・。
懐石料理のお店に片っ端から電話してみたら、と主催者の永桶さんにご相談したのだが、新潟には百軒くらいあってとても無理だという。
永桶さんの携帯で私のメールアドレスを呼び出し、パスワードを入れてみたものの、今は二段階認証で、東京に置き忘れたスマホに届いているはず。
途方に暮れていたら、永桶さんがまちやま図書館で地図を検索し、友人の住所を特定してくださった!
早速永桶さんの車で新潟へ。ナビに住所を入れ、目的地周辺を探索するが、なかなか見つからない。焦る私。永桶さんのアイディアで、ご近所のお宅のインターフォンでお尋ねしてみる。何軒か目でご存知の方が見つかり、友人宅まで連れて行ってくださった。
六時を過ぎていたので、もう出かけてしまったのではないかと心配したのだが、ベルを鳴らすと無事友人が出てきた!
バス停で待ち合わせのはずがなぜ? と怪訝そうな彼女に顛末を話すと呆れ顔。後でメールを読んでわかったのだが、新幹線に乗る時刻が決まったら連絡することになっており、なかなか来ないので家で待っていたという。
よく見つかりましたね・・・と永桶さんの超人的なご努力に敬意を表していた。
そんなわけで、奇跡的に予約した時刻に古町の料亭「京相模」へ。
新潟の銘酒「〆張鶴」で乾杯。前菜は秋の吹き寄せ、ついで松茸のお吸い物、お造りは甘海老、烏賊、鯛、鮪。椀物はしんじょう、焼き物は甘鯛、地元の村上牛のステーキ、いくら乗せご飯と味噌汁。
いずれも結構なお味だったが、中でも甘鯛と村上牛は最高。お店に行き着くまでが大変だっただけに、美味しさもひとしおでした!