今年は開催年!
ショパン・コンクール
第1次世界大戦後の1927年に始まったショパン国際ピアノコンクールは、2年後に創設100年を迎えます。今年は第19回の開催年で、10月2日から、予備予選を勝ち抜いたコンテスタント(出場者)による本大会がポーランドのワルシャワ国立フィルハーモニーで始まります。
歴史や見どころを紹介します。
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新たなショパンの解釈にも期待
青柳いづみこ
1927年創設のショパン・コンクールは「ピアノの詩人」ショパンの作品だけによって競われるまれなコンクールで、世界でもっとも注目、されるピアニストの登竜門である。
今回の第19回コンクールは書類・映像審査と4月の予備予選を経て、10月に本大会が開催される。今回は主催者が定める主要コンクールの上位入賞者による予備予選の免除枠が拡大されたため、アメリカの実力者、エリック・ルーや韓国のイ・ヒョク、日本の牛田智大、小林海都、桑原志織らも参戦してくる。
ファイナルでは、2曲の協奏曲のいずれかを演奏することが定められているが、ショパンの若い時期の作品のため、音楽性が判断しにくいと批判されることもあった。今回は最晩年のソロ曲「幻想ポロネーズ」が加わり、多角的な審査が可能になる。
審査員長には、創設以来初めてポーランド以外の国からギャーリック・オールソン(アメリカ)が就任、2010年優勝のユリアンナ・アヴデーエワ(ロシア)など新メンバーも加わり、審査傾向の変化に注目が集まる。日本からは1980年の第5位・海老彰子とともに、90年のセミファイナリスト・児玉桃も加わる。
優秀なアジア系のピア三ストを擁するダン・タイ・ソン門下は、伝統的な解釈が尊ばれた従来の演奏イメージを覆す個性派ぞろいで、2015年にはエリック・ルーを含む3〜5位入賞者、21年には優勝者ブルース・リウを輩出している。前回のファイナリスト、ハオ・ラオはじめ最多の29人が進出した中国勢、予備予選免除者3人に加えて前回のセミファイナリスト・進藤実優、今大会最年少の中島結里愛を含む13人の日本勢との戦いが興味深い。
「リアル・ショパン」を求めて創設されたショパンが生きた時代の楽器を使ったピリオド楽器のためのショパン・コンクールからも、第2回の優勝者エリツク・グオはじめ7人が駒を進め、新たな視点からのショパンの楽曲の解釈に期待が寄せられる。
(ピアニスト・文筆家)
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☆フレデリック・ショパンって?
(1810-1849 享年39)
ポーランドに生れ、20代以降はパリを中心に活躍。作品した曲のほとんどがピアノ曲でワルツ、ポロネーズ、ソナタなど多彩な楽曲があり、「ピアノの詩人」と呼ばれる。叙情的で哀愁を誘うメロディーで日本でも人気が高い。
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☆国立フレデリヅク・ショパン研究所(NIFC)
ポーランドの国立研究機関で、ショパンという文化財の保存のために設立された。自筆譜や手紙などの保存、研究のほか、ショパン博物館の運営や芸術イベントを企画
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「ショパン国際ピアノコンクール」とは世界三大ピアノコンクールのひとつで5年に1回開催される。課題曲すべてがショパンの曲で成立し、国立の研究所(フレデリック・ショパン研究所)が主催する特殊なコンクール。参加資格は1995〜2009年生まれ。単にテクニックや音の美しさを競うのではなく、ショパンの意図を理解しショパンならどう弾くかを表現する。
主要なコンクールは大体3年に1回、4年に1回の開催だが、ショパン・コンクールは5年に1回のため、出場者には多くても3回しか出場機会がめぐってこない。
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コンクールの流れ
各予選で人数は約半分に絞られ、ファイナルに出場できるのは約10人。優勝賞金は6万ユーロ
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エリザベート王妃国際音楽コンクール、浜松国際ピアノコンクール等の1、2位入賞者は予備予選が免除される。今回は「直近のコンクールで」の縛りがなくなり、本大会に選ばれた85人中、19人が免除者(前回は87人中9人)。映像・書類審査からの申込者には狭き門となった
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☆世界三大ピアノコンクール
●ショパン国際ピアノコンクール(ポーランド)
●エリザベート王妃国際音楽コンクール(ベルギー)
●チャイコフスキー国際コンクール(ロシア)
今年はショパン・コンクールのほかヴァン・クライバーンピアノコンクール、エリザベート王妃国際コンクール、ロン・テイボー国際コンクール、ブゾーニ国際ピアノコンクールなどが重なるコンクールの当たり年。コンテスタントにとってはどのコンクールに出るか悩ましい年に。
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☆選択制の二つの協奏曲ってどんな曲?
●ピアノ協奏曲第1番ホ短調Op.11(演奏時間約40分)
華やかで若々しく情熱的な雰囲気が特徴。実は1番の方が2番より後に作曲されており、曲としての完成度が高い。2番よりピアノの独奏部分が多い
●ピアノ協奏曲第2番へ短調Op21(演奏時間約32分)
初恋の入への思いが表れた繊細な旋律が美しい。1番よりオーケストラとの共演部分が多く、練習時間が少ないコンクールでの演奏が比較的難しい
●ファイナルでソロ曲「幻想ポロネーズ」も課題に
ファイナルではこれまで、ピアノ協奏曲2曲のうち1曲を選択して演奏する形式だったが、ショパンの晩年の曲で最難曲の一つである「幻想ポロネーズ」が追加された。また、協奏曲では1番で優勝する人が圧倒的に多く、第2番で優勝したのは第3回のヤコブ・ザーク(ソ連)と第10回のダン・タイ・ソン(ベトナム)のみ
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●本大会への日本人出場者 ※五十音順
小野田有紗、京増修史、島田隼、東海林茉奈、進藤実優、中川優芽花
中島結里愛(本大会最年少の15歳)、西本裕矢、山縣美季、山峙亮汰
●予備予選免除者
牛田智大、桑原志織、小林海都
※情報は5月6日時点
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☆今年の本大会の日程
10月2日 オープニング
3〜7日 1次予選
9〜12日 2次予選
14〜16日 3次予選
17日 ショパンの命日・没後176年セレモニー
18〜20日 ファイナル
21〜23日 入賞者コンサート
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コンクールの演奏をライブ配信
予備予選以降のコンクールの模様は国立ショパン研究所のYouTubeチャンネル等でライブ配信される
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☆ショパン・コンクールのこれまで
※ヤマハ株式会社ホームページ等を参考に作成
主な日本人入賞者
●第1回(1927年)
初回優勝者はレフ・オボーリン(ソ連)。ソ連とポーランドが上位を独占
●第3回(37年)
原智恵子、甲斐美和が日本人で初参加。原智恵子が聴衆賞
●第4回(49年)
第2次世界大戦をはさみ12年ぶりに開催。ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ(ポーランド)がベラ・ダヴイドヴイッチ(ソ連)と、ともに女性として初の1位に。開催国から初の優勝者が出る
●第5回(55年)
田中希代子が10位と日本人初の入賞者に
戦禍で焼失したホールを再建し、前回から6年後に開催
●第6回(60年)
マウリツィオ・ポリーニ(イタリア)が旧ソ連とポーランド以外から初の優勝者に
●第7回(65年)
中村紘子が4位
マルタ・アルゲリッチ(アルゼンチン)が優勝
●第8回(70)
内田光子が2位
●第9回(75年)
クリスチャン・ツィメルマンがポーランドから20年ぶりの優勝者に
●第10回(80年)
海老彰子が5位
ベトナムの無名の青年、ダン・タイ・ソンが史上初めてアジア人で優勝
●第11回(85年)
小山実稚恵が4位
スタニスラフ・ブーニン(ソ連)が優勝。カワイ、ヤマハが公式ピアノに加わる
●第12回(90年)
横山幸雄が3位、高橋多佳子が5位
史上初の1位なし
●第13回(95年)
宮谷理香が5位
●第14回(2000年)
佐藤美香が6位
ユンディ・リ(中国)が史上最年少の18歳で優勝
●第15回(5年)
関本昌平、山本貴志が4位
ラファウ・ブレハッチが30年ぶりにポーランドから優勝
●第16回(10年)
ユリアンナ・アヴデーエワ(ロシア)がアルゲリッチ以来、45年ぶりに女性ピアニストとして優勝、日本のピアノ(ヤマハ)を使用したコンテスタントが初優勝
●第17回(15年)
●第18回(21年)
反田恭平が2位、小林愛実が4位
コロナで1年延期して開催。ブルース・リウ(カナダ)が優勝
●第19回(25年)
栄冠は誰の手に?!
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☆本大会の公式ピアノと特徴
●スタインウェイ(アメリカ)
コンクールで最も長い歴史。華やかでオケとの共演でも埋没しない音色
●ヤマハ(日本)
第11回から採用。明るく澄んだ音色、キレのよいタッチが魅力
●カワイ(日本)
第11回から採用。優しく温かみのある音色。深みのある響き
●ファツィオリ(イタリア)
第16回から採用。艶やかで歌謡性に優れた音色
●ベヒシュタイン(ドイツ)
50年ぶりに使用ピアノに復活。クリアで繊細でみずみずしい響き
・2021年ブルース・リウはファツィオリ、第2位の反田恭平はスタインウェイ、同位のアレクサンドル・ガジェヴはカワイ、第4位の小林愛実はスタインウェイで演奏
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☆2021年大会のドキュメンタリー映画
「ピアノフォルテ」(ヤクブ・ピョンテク監督/ポーランド/89分)
2位入賞のアレクサンダー・ガジェブ、5位入賞のレオノーラ・アルメリーニら6人のコンテスタントの戦いにカメラが密着。緊張感にあふれたコンクールの舞台裏に迫る。
9月26日から全国順次公開。
●制作:サンデー版編集部 瀬野由香 デザイン伊藤潤
●取材協力:ピティナ(一般社団法人全日本ピアノ指導者協会)、国立フレデリク・ショパン研究所(NIFC)
●出典・参考文献:「ショパン・コンクール見聞録 革命を起こした若きピアニストたち」(青柳いづみこ著、集英社新書)
ピティナホームページほか

