【連載】「PICK UP クリスタルな官能」(芸術新潮 2014年10月号)

ザ・シックスティーン『パレストリーナ Vol.5』

東京エムプラス 2857円(税別)
青柳いづみこ選・文

クリスタルな官能

パレストリーナ(1525頃〜94)はイタリア、ルネサンス期の大作曲家である。ローマ教会に仕え、教皇聖歌隊のためのミサ曲や賛美歌を作曲した。400年たったこんにちでも、その作品は教会のみならずコンサートや録音など、あらゆる形で演奏されつづけている。

この時代の合唱曲は、ポリフォニーといって4声〜6声ほどが応答し、からみあい、精妙なやり方で装飾された。フランス近代の作曲家ドビュッシーはこの装飾を唐草模様にたとえ、《触れなば崩れんばかりに繊弱なアラベスク」と賛美している。

イギリスの合唱団「ザ・シックスティーン」による本アルバムには、教皇グレゴリウス13世に献呈されたモテット集『ソロモンの雅歌』の一部も収録されている。

『ソロモンの雅歌』はもともとヘブライの愛の詩で、ラブ・シーンを感じさせる表現も多い。ルネサンス期にマリアを讃えるために使われたとはいえ、透明な中にもそこはかとない官能が漂ってくるのが魅力。

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