7、8月は2人の新米ママと連弾コンサートで共演する。ピアノは一人で演奏するが、2人で一台を分けあって弾くこともある。ピアノの先生が生徒と弾くために書かれた連弾曲では、生徒のパートが比較的易しく書かれていることが多い。作曲家が子供をもつ友人のために
連弾曲を書くケースもある。
フォーレの「ドリー」はサロンの女主人の娘の誕生日に贈られたし、ラヴェルの「マ・メール・ロア」は、支援者の子供たちを喜ばせるために書かれた。今回私が共演するのは、スペイン帰りとドイツ在住のビアニスト。お二人とも私の娘世代で、スペインさんは第1子が誕生したばかり。近くの保育園で夕方までは預かってくれるが、自分の練習だけではなく、レッスンやコンクールの審査もあり、綱渡りの毎日。幸い、よく寝る子なので助かっているという。
ドイツさんには子供が2人いて、2人目は1歳になったところ。1人目の時は演奏活動を続けていたが、2人目は完全に1年休み、日本での演奏会のために復帰した。子供は時差ボケに弱く、帰国したては1時間おきに起きてしまうそうだ。私が子供を授かったのは35年も前のことだが、強烈に覚えているのは寝つきが悪かったこと。お昼寝もろくにしてくれないので、練習時間を確保するために生徒さんを子守に雇い、娘を乗せた乳母車をずっと揺すっていてもらっていたっけ。
そんなわけで、私が新米ママたちと共演するために選んだのは、アンデルセン「眠りの精のオーレおじさん」に基づく連弾曲。フランス近代の作曲家フローラン・シュミットが、童話の筋をうまくアレンジして、ステキな組曲を書いてくれた。
オーレおじさんは北欧の妖精で、夜眠らない子がいると、こっそリベットに近づき、目の中にミルクをさす。彼は二つの傘を持っていて、良い子には良い夢を見るように楽しい絵が描いてある傘を、悪い子には無地の傘をさしかけるという。
新米ママさんの子供たちにも良い眠りが訪れますように。
2019年8月12日 このごろ通信の記事一覧>>
*このごろ通信 より
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