【コンサート評】「名画の空間でゆかりの矢代作品を」(音楽の友 2012年12月号)

第128回を迎えた大原美術館ギャラリーコンサートで岡田博美のリサイタルを聴いた。何という贅沢な時間だったことだろう!ピアノは1901年製のべヒシュタイン。ヴィンテージ・ワインにも似た芳醇な音色。ピアノの横には、モネの『積み藁』と『睡蓮』。客席の後ろに目を転じると、ゴーギャン『かぐわしき大地』、ルノワール『泉による女』などの名画がさりげなく飾られている。

岡田の指がバッハ「フランス風序曲」を奏でたとき、絵画はなんと音楽に合うのだろうと思った。抽象の粋を凝らしたブーレーズ《ノタシオン》もすばらしかったが、なんといっても白眉は最後に置かれた矢代秋雄「ピアノ・ソナタ」。大原美術館の委嘱で作曲され、当美術館で初演された傑作である。特別に、矢代が愛したモロー『雅歌』も会場内に展示された。大伽藍のような構成と耽美的な色彩。泰西名画に勝るとも劣らない見事な演奏を堪能した一夜だった。

2012年12月27日 の記事一覧>>

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