「むし歯予防デー」に生まれたので、むし歯がないのが自慢だ。友人の歯科医に診てもらったときも、珍しく「カリエスがない」とお褒めの言葉をいただいた。でも、油断はならぬ。これからは歯槽膿漏との戦いだ。
歯磨きは趣味のようなもので、机まわりには何本かの歯ブラシ、歯間ブラシ、糸楊枝などがころがっていて、 原稿書きに詰まると歯を磨く(今も磨きながら、書いている)。しかし、それでも歯垢はたまってしまうようで、スケーリングに行くとガリガリやられる。とくに、下の前歯が少し重なりあっているので、歯垢がたまりすい。下は注意して磨いているのだが、前歯はもともと間がすいているので安心していたら、あるとき、そのすき間がどんどん拡がってきた。レントゲンを撮ると、歯槽膿漏が進行しはじめているという。これも、ごぼっと歯垢を取ったらだんだんすき間が狭くなって、今ではあまり気にならなくなった。
それ以外の永久歯は優等生だが、下顎の親知らずが妙な具合に生えている。右は顎に余裕があったらしく、 少し離れた場所からにょきっと生えたので、遮るものがなく、他の臼歯より背が高い。これが邪魔で、ものを食べるときはもちろん、しゃべるときまで支障をきたす。左は思いきり斜めに生えてしまい、何かというと炎症を起こす。疲れがたまると痛みはじめる。歯医者さんによっては「きれいさっぱり抜いてしまいましょう。スッキリしますよ」とおっしゃる方もいるのだが、親知らずを抜いたあと大病した方を2人も知っているので、なかなか踏み切れない。
モノ書きピアニストの端くれとして、ときたま新聞や雑誌の取材があったり、テレビに出演したりする。歯が黄ばんでいるのが気になり、審美歯科の門を叩いた。完全に真っ白にはなりませんが、よい方法があります……と女医さんはおっしゃる。まず歯型をとり、プラスチック製のオリジナル・カバーをつくる。そこに薬剤をたらし、日に2時間ほど歯にかぶせる。上下ともカバーをつけるのがいやなら、上下2時間ずつ、計4時間。これを2週間つづける。毎日コンスタントに治療するのがポイントだという。審美治療をしている間は、歯に汚れがつくもの、たとえば赤ワイン、コーヒー、紅茶などは飲まないようにと言われる。まれに薬剤が歯に沁みて痛くなることもあるという。
う一ん。考えこんでしまった。
透明とはいえ、歯にカバーをかぶせていると、なかなか人前には出にくい。外出しない2時間ないし4時間を確保できる2週間というのを、はたしてつくることができるだろうか。しかも、その間、好物の赤ワインとコーヒー、紅茶が禁止 (白ワインやビール、日本酒、焼酎、緑茶は飲めるわけだが)というのはいかにも辛い。病院に通って治療するのではなく、自宅で任意のときにスタートするというのもネックだった。つまり、いつでも始められるが、いつ始めたらいいかきっかけがつかめないのだ。結局、オリジナル・カバーをつくっただけで、いまだに治療は開始していない。薬剤はそこら辺にころがっている。
多少黄色くても、丈夫な歯が一番!