「自分の第2の楽器」と語るペダリングにも注目!
アンリ・バルダは、日本が再発見したピアニストと言っても過言ではなかろう。1981年にN響との共演で来日しているが、その後しばらくは公の招聘からは遠ざかっていた。私が初めてバルダの演奏に接したのは2002年、トッパンホールでのリサイタル。とりわけラヴェルの〈高雅で感傷的なワルツ〉や《クープランの墓》の圧倒的なドライブ感、色彩感、浮遊感に魅せられた。今回は初の浜離宮朝日ホールでの主催公演を含む4公演。上記2曲の他、同じくラヴェルのソナチネ、ショパンの即興曲とソナタ第3番などを弾く。バルダの師ティエガーマンは、95歳でリサイタルを開いて話題になったホルショフスキーと同じく、ウィーンのレシェティツキ門下。バルダもショパンをことのほか得意とし、ソナタ3曲を集めたCDでもショパン賞を得ている。
インタビューを申し込んだら、言葉で説明するかわりに、とプログラムを弾いてくれた。火を吹くような情熱とともに、思いがけない優雅さ、柔らかさも彼のピアノの特徴だ。 私が注日したのは、ペダリング。あるときは右足で、あるときは左足で、自在にミドルペダルを踏み替える。意図的なものかと尋ねると、どのように踏んでいるか、自分でもわからないという答えが返ってきた。「ペダルは自分にとって第2の楽器だ」。ステージでは、ぜひ足元にも注日してほしい。