ドビュッシーとショパンの関わりを焦点に置いた6日間
ショパン生誕200年の2010年に始まった日本ショパン協会による「ショパン・フェスティバルin表参道」 が今年も去る5月28日(月)から6月2日(土)まで、東京・神宮前のカワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」で行なわれた。 今年はドビュッシー生誕150年に当たるため、ドビュッシーとショパンの関わりに焦点が置かれ、 若手のピアニストたち(山田剛史、小林有紗、日高志野、岩崎洵奈、大田佳弘、宮崎翔太の皆さん) が出演したランチタイムコンサートでは、どの日もドビュッシーとショパンの作品が演奏された。
イブニングコンサートは、興味深い企画で行なわれた。 初日の5月28日は、「ショパンだけの秘密? マズルカを弾く鍵」と題したトークとコンサート。 楠原祥子氏と小林仁日本ショパン協会会長とによる対談と、楠原氏のマズルカ演奏。29日は「ピアノ音楽の2つの絶頂」と題したピアノコンサート。前半に岡本愛子氏がドビュッシーの12の練習曲を、後半では津田理子氏がショパンの12の練習曲Op.25を演奏。 30日は、ノクターンを中心とした徳丸聰子氏のピアノ・リサイタル。31日は、「ショパンへ繋がる響き、そして発展する響き」と題した森知英氏のピアノ・リサイタル。モーツァルト/デュポールの主題による変奏曲K.573、ショパン/12の練習曲Op.25より第1番、幻想即興曲、バラード第1番、第3番、子守歌Op57、ポロネーズ「英雄」、ゴドフスキーの作品などが演奏された。
6月1日は、「20世紀に花開いたショパンの遺産」と題したレクチャーコンサート。ショパンとドビュッシーの前奏曲、練習曲をテーマに、ドビュッシーがショパンから学び、発展させたものを、奏法の具体例を交えて、同協会理事の青柳いづみこ氏がレクチャーをし、堀江真理子氏がドビュッシーの前奏曲集第1集全曲を演奏した。
最終日の2日は、「ショパンが20世紀にもたらしたもの」と題したピアノコンサート。ドビュッシーを手がかりに探るショパンのサウンドの秘密について、プレゼンターの青柳いづみこ氏が冒頭で触れ、その後、谿博子氏がドビュッシーの前奏曲集第2集全曲を、後半には海老彰子氏がショパンの前奏曲集Op.28全曲を演奏して、今年のショパン・フェスティバル2012 in 表参道が終了した。
今回のフェスティバルの総入場者数は、のべ1,236名、1公演あたり平均103名の入場者があったわけで、 会場のスペースを考えると、毎公演、大盛況であったと言えよう。ショパンの名曲をただ演奏するだけのフェスティバルでなく、前述したようにドビュッシー・イヤーに相応しく、ドビュッシーとの関わりに焦点を当てたレクチャーコンサートあり、トーク・コンサートあり、リサイタルありと、非常に中身の濃い6日間であった。