【インタビュー】「ディーナ・ヨッフェ」(ショパン2016年5月号)

ショパンとスクリャービンの前奏曲を、色彩感豊かなファツィオリで

文◎青柳いづみこ(ピアニスト・文筆家)


ディーナ・ヨッフェ

ラトヴィア共和国リガ生まれ。1974年ロベルト・シューマン国際音楽コンクールおよび1975年ショパン国際ピアノコンクール第2位受賞。世界的な名声を博し、各地で精力的な音楽活動を行なってきた。教授としての人気も高く、各国で数多くのマスタークラスを実施。またショパン国際ピアノコンクール等の国際コンクールで審査員を務める。現在、リセウ音楽院(スペイン)特別教授、ブレシア(イタリア)「タレントミュージックマスターズ」アカデミー教授。


4月26日(火)、豊洲シビックセンターホールで、ショパンとスクリャービンの前奏曲をファツィオリで演奏予定のディーナ・ヨッフェさんにお話をうかがった。

ヨッフェさんといえば、1975年のショパン国際ピアノコンクールで、ツィメルマンに次いで第2位に入賞したことで知られる。今は亡き音楽評論家、野村光一先生がヨッフェさんの大ファンで、彼女を育んだロシアのメソッドをぜひ日本にも導入したいと尽力された。

ヨッフェさんは第17回ショパン国際ピアノコンクールでは、春の予備選と秋の本大会を審査されたので、まずコンクールについてうかがった。

I 今回は全体的に個性的な演奏が目立ったようですが。
Y レベルは高く、よく準備されていましたが、前回の方が”ショパニスト”が多かったですね。私はオールドファッションかもしれませんが、あまり自由すぎる演奏は好きではないのです。
I 優勝したチョ・ソンジンについてはいかがですか。
Y 完壁な演奏でしたが、ラウンドの間は少しマジメすぎる印象もありました。入賞者演奏会で初めて、彼が秘めていたすばらしい音楽が爆発したように感じました。
I コンクールでは、「ショパンらしい演奏」についていつも議論になるようですが。
Y ポーランドでは柔らかくシンプルで繊細な演奏が好まれるようですが、私自身は、ショパンをもっと激しく、単にきれいなだけではなく複雑で深い音楽ととらえています。
I 同じラトヴィア出身のオソキンスについてはどうでしょう。
Y 彼は非常に才能のあるピアニストです。フレキシブルな演奏で聴衆の人気は高く、評価する審査員もいましたが、将来のことを考えるなら、もう少しいろいろな人の意見を聞いて、地道な勉強を続ける方が良いと思います。
I 若いピアニストたちへのメッセージを、
Y 先生方からアドバイスをいただいたり、すばらしい演奏を聴くのはよいですが、他の誰かではなく自分自身になるように努力してください。YouTubeで解釈をコピーしたものはすぐにわかります。長い演奏活動を目指して、若い時にショパンばかり弾かず、古典もしっかり勉強することをすすめます。
I 今度のヨッフェさんのリサイタルはショパンとスクリャービン、二人の《24の前奏曲》ですね。共通点は何でしょうか。
Y どちらも5度圏で並んでいますが、それぞれはずいぶん違います。でも、言葉よりも実際の音で説明したいです(笑)。
I ーチラシに書かれている通り、スクリャービンから始めるのですか?
Y これも会場にいらして体験していただきたいのです。というのは、ショパンとスクリャービンの前奏曲について、皆さんをあっと驚かせるようなことを計画しているので、先に種明かししたくないのです。

色彩感豊かなファツィオリ体験をとても楽しみにしているというヨッフェさん、若いピアニストに注ぐ暖かいまなざしと音楽への大きな愛を感じたひとときだった。

『ディーナ・ヨッフェ ビアノ・リサイタル』
2016年4月26日(火)19:00
豊洲シビックセンターホール
[曲目]スクリャーピン:24の前奏曲Op.11
ショパン:24の前奏曲Op.28
問:ピアノフォルティ株式会社
03−6809−3534

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