1.『私の方丈記』(三木卓著・河出書房新社)
2.『物数寄考—骨董と葛藤』(松原知生著・平凡社)
3.『ピアノを弾く哲学者』(フランソワ・ヌーデルマン著、橘明美訳・太田出版)
1.今年の座右の書。鴨長明『方丈記』の現代訳に、三木自身の来し方来歴が重ね合わされる。平安の世も平成の世にも天変地異が起き、弱者が虐げられる。その中ですべてを凝視し、すべてを受容するまなざしが心に沁みる。
2.「骨董蒐集は病気」と言ったのは亡祖父青柳瑞穂だが、川端康成、小林秀雄らの蒐集歴を丹念に追い、作品に与えた影響に迫る好著。骨董蒐集は彼らにとって逃避だったのか、文学の新たな地平を開くアイテムだったのか。
3.こちらは、アマチュアながら音楽に憑かれた三人の哲学者と「ピアノ演奏」とのかかわり。二十世紀音楽の推進者だったサルトルが、自分のために弾く曲はショパンやドビュッシーだったというのもおもしろい。