【インタビュー】「ドビュッシーの神秘 」(ムジカノーヴァ 2012年11月号)

発表会やレッスンで弾いて印象に残っている曲最初の発表会で弾いたピエルネ「昔の歌」。ピエルネはドビュッシーのひとつ下でパリ音楽院の同級生である。「昔の歌」は『子供のためのアルバム』の一曲で、ひなびたなつかしい感じの作品だが、最後に同じ旋律が長調から短調に変わる部分がとても好きだった。

思いが伝わる音づくり

このごろよく、思いを伝える音、ということを考える。

音楽は心の言葉だから、気持ちがそのまま音に出る。また、出なければならないと思う。以前は、よく弾けているが起伏にとぼしい演奏は、その人の内面に問題があるのだと思い込んでいた。しかし、長い間教えるうち、人間の感情にはそれほど差はなく、むしろ、それをうまく伝える音づくりこそが大事なのだとわかってきた。

生徒たちには、こんなアドヴァイスをする。

たったひとつの音でも、鳴らして、ペダルで響かせ、耳をすませてみてほしい。その音は、あなたのいろいろなシーンで起きるいろいろな気持ちのどれかを代弁しているだろうか?  また、音をつないで連結に思いを重ねてみてほしい。それは、あなたの喜怒哀楽に則したカーヴを描いているだろうか?  楽器が出口になって自然な感情が流れ始めたときの喜びは、何ものにもかえがたい。

2012年11月27日 の記事一覧>>

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