『痴呆を生きるということ』(小澤勲)
ついさきころ、95歳の母を見送った。
認知症で自宅介護7年、施設入所8年。
本書が刊行されたときはすでに施設にお世話になっていたが、認知症を病む人々の内面をおしはかり、深いいつくしみの情をもってなされる分析の数々に胸を衝かれた。
もの盗られ幻想でどれほど悩まされたかわからないが、攻撃性の裏には寄る辺ない寂寥感、喪失感があったとは!
「一人ひとりのこころに寄り添い続けると同時に、生きるエネルギーを殺がないようにこころを配る」ことがどんなに大切だったか。
母がいなくなってからまたページを繰り、悔悟の念とともに人間というものの奥深さに思いをはせている。