「集う」
「安川加壽子記念会」(2011年6月24日、東京都中央区の浜離宮朝日ホール)
在りし日の姿に思いをはせる
平成8年7月に74歳で亡くなったピアニスト、安川加寿子(かずこ)さんの功績を振り返る「安川加壽子記念会」は今年で10回を数えた。昼夜2部構成で、音楽関係者ら451人が参加。戦後日本のクラシック界を牽引した名ピアニストの在りし日の姿に思いをはせた。
司会は、安川さんに師事したピアニストの青柳いづみこさん。青柳さんは著作「翼のはえた指 評伝安川加壽子」(白水社)で、優れた芸術評論を顕彰する 「第9回吉田秀和賞」を受賞した文筆家でもある。ラヴェルの「水の戯れ」など9曲を弾く安川さんの約30年前の演奏が上映され、青柳さんが「躍動するペダ ルのリズム感が素晴らしい。フランスで育った安川先生は、小学生の頃にダンスの授業を受けていた」などと師の魅力を解説した。
外交官の父に伴い、幼くして渡仏した安川さんは昭和12年にパリ国立高等音楽院を卒業。14年の帰国以来、日本を代表するピアニストの一人として国内外 で活躍した。27年から平成元年までは東京芸大教授として多くの後進を世に送り、日本ショパン協会会長や日本演奏連盟理事長などの役職も歴任。演奏家とし ての活躍以外にも大きな足跡を残した。
参加者たちは、安川さんの映像にじっと見入っている。元東京芸大副学長で作曲家の野田暉行(てるゆき)さんは「フランスでピアノを習われた結果、たたき つけるのではなく力を抜いて音を鳴らすという脱力した奏法を身につけたのだろう」。青柳さんは「軽やかに弾いているが『どんなに難しくても、その難しさを 悟られずに弾かなければならない』と教えてくれた」と、振り返った。
映像が終わると、拍手が響き渡った。そして、会場のあちこちで参加者たちが安川さんの思い出を語り合った。(竹中文)