二〇二四年六月二十日、パリでの演奏会の翌日、ベルリンに飛んだ。
以前からお世話になっている竹谷サロンでは、ベルリン芸大在学中の新進ピアニスト、秋山紗穂さんとの共演。シューベルトの連弾曲『ロンドイ長調』と『幻想曲へ短調』。プーランク、タイユフェール、オーリックなどフランス六人組の連弾曲。
あらかじめ楽譜はお送りしていたものの、ご一緒するのは初めて。二十一日午後、サロンをお借りしてたっぷり三時間練習したあと、夕食。
せっかくだからドイツ料理が食べたいのだが、付近には本格的な店がなく、地下鉄でビスマルク・シュトラセ駅まで出る。お目あてのレストランは、すでに人でいっぱい。かろうじてあいていたテラス席に陣取る。私は地ビール、秋山さんは果物のはいった赤い綺麗な色のビールで乾杯。
ドイツにくると注文するアイスバイン(豚の骨つきすね肉の塩漬け)は巨大で、付け合わせもザワークラウト、茄でたジャガイモ、ピューレ、サラダと盛りだくさん。毎度のことだが、二人で一皿にすればよかったと後悔してももう遅い。
柔らかく煮込んであり、ナイフを入れると骨からするっと離れる。マスタードをつけていただく。ビールとの相性抜群だが、とにかく巨大なので、食べても食べても減らない。
翌二十二日は、年に一度開かれるベルリン・フィルの「ヴァルトビユーネ(野外コンサート)」へ。竹谷さんは毎年ゲネプロに招待されるそうで、お話を伺っているうちに行きたくなった。当然完売なのだが、団員の方に頼んでくださったようで、秋山さんのぶんもゲット。
早めの夕食は、竹谷さんとご一緒にサロン近くの多国籍料理店「トマザ」へ。ラム肉のボウルとサーモンのボウルを注文し、秋山さんとシェア。こちらは心配したほど巨大ではなく、肉と魚にはヨーグルトのディップをつけていただく。お米もついているので胃がほっとする。野菜のチップスやアボカド、山羊のチーズも美味しかった。
「ヴァルトビューネ」はテントつきのステージで客席は石段。昼間が長く、コンサート開始の二十時十五分にはまだ西陽が照りつけている。ムソルグスキー『禿山の一夜』の最後のピアニッシモでちょうど陽が沈み、とても綺麗だった。
ユジャ・ワンがソリストをつとめたプロコフィエフ『協奏曲第一番』で休憩。売店にビールやおつまみを買いに出る人も多く、ラヴェル『亡き王女のためのパヴァーヌ』が始まって三々五々戻ってくる。ようやく客席が落ち着いた『ダフニスとクロエ』では、E・パユのフルートがすばらしかった。
二十三日はいよいよ私たちのコンサート。日本語とドイツ語のテキストを用意し、日本語は私が、ドイツ語は竹谷さんが朗読してくださる。ときどき私がテキストにないことを話すと、竹谷さんは即座に翻訳してくださり、ドイツ人のお客さまもうんうんとうなずく。
とてもよい雰囲気のうちに終演し、近くのベトナム料理店での打ち上げへ。竹谷さんご夫妻、秋山紗穂さんとお母さま、ハンス・アイスラー音大留学中のリード希亜奈さん、ベルリンでお仕事をされている保屋野美和さんと楽しくお食事。
十一時近くにお開き。竹谷さんにブランデンブルク通りのホテルまで送っていただく。着いたころに保屋野さんからメッセージ。お近くに住んでいらっしゃるらしく、まだしゃべり足りないのでそちらに伺ってもよいですか?とのこと。
なんとビールを四本携えてご来訪。こちらもピッツァなどをお出しして二時ごろまでおしゃべりし、長い長いベルリンの夜となった。
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