【書評】「水のまなざし」週刊朝日 2010年12月3日号 評・西條博子

話題の新刊

文筆家としても知られるピアニストが満を持して小説を書いた。

「喉」から映し出される世界を視るという、非凡な物語だ。音大の附属高校のぴあの科に通う主人公の真琴は、突然声が出なくなる。そのため、初見視唱も面接もある留学生試験をあきらめ、副科の声楽も単位を落とし、休学してしまう。海外の著名オペラ歌手を診察し、その声帯の数々を知る医者は、楽器を弾く人は声を出して歌わずとも、声帯を動かす筋肉を使っていると言う。そもそも子音に必ず母音がついてくる日本語自体が喉に悪いのに、社会に声を大切にする意識が欠落している、とも。ただし、真琴にはまず楽譜から聴こえてくる歌があり、ピアノで再現できないことに苦しんでいた。能の『隅田川』と、それをアレンジしたブリテンのオペラを聴き比べる一幕あり、男性から性愛の対象として見られることへの好奇心あり。濃密な一冊。

水のまなざし
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