フランスのピアニズム
『安川加壽子の発表会アルバム』を通して
講師:青柳いづみこ
開催日:2024年1月22日(月)
会場:宮地楽器 ららぽーと立川立飛内 ららぽーとホール
『メトードローズ』などフランスの教材や音楽を紹介し、戦後日本のピアノ教育に貢献した安川加壽子先生。門下生の青柳いづみこ先生は昨年、1950〜60年代に門下生が発表会で弾いた楽曲をまとめた楽譜集を編纂。セミナーでは、生徒のために安川先生が選んだフレンチ・バロックや小粋な近現代曲を実演しながら、そのピアニズムや魅力を語りました。
[取材協力]宮地楽器
「総合楽器店」にとどまらず、「音・音楽の専門店」として、音楽講座、アーティストによる特別レッスン、コンサートなどを積極的に開催している宮地楽器。多摩モノレール立飛駅直結のららぽーと立川立飛センターでも、ほぼ月に1回のペースで、音楽をより深く知ることができる講座を行っています。
今回は、小学校2年生から安州門下生の発表会に参加していた青柳先生が、『安川加壽子の発表会アルバム』やCD『昔の歌-安川加壽子門下生発表会より』(コジマ録音)の曲を取り上げ、門下生だったからこそ知り得た安川先生のエピソードを交えた解説と実演で講座が進められました。
前半のテーマはフレンチ・バロック。楽譜集に掲載された「クープランの装飾音例」を紹介し、クープラン《小さな風車》《修道女モニク》《恋の夜鶯》などを例に、クラヴサン(チェンバロ)曲における装飾音の入れ方が実演されました。また、「スティル・ブリゼ」や「イネガル奏法」、右手と左手をずらすなど、バロック特有の技法などにも触れられました。
後半のテーマは、近現代の曲。たとえばカゼッラ『子どものための11の小品』について、「左手と右手で違う調を弾いていたり、小節ごとに拍子が変わったり、数々の斬新な手法が使われています。子どもたちが楽しみながら、プチ現代音楽体験ができる曲集です」と紹介。瑞々しい演奏が展開されました。プーランク『村物語』では、《スタッカート》で使う手首や肘から腕を落とす軽やかなスタッカートも詳しく解説。受講生の皆さんも実際に腕を動かしながら、脱力の仕方などを確認していました。
セミナーの終盤、青柳先生は、「安川先生が導入したフランスのピアニズムが、ようやく日本で育ってきている」と述べ、最後は、小学5年生の発表会で弾いたというラザール・レヴィ《子守歌》を演奏。フランス音楽をより深く知るうえで非常に示唆に富んだセミナーは、温かな雰囲気の中で締めくくられました。
青柳先生のクレッシェントやテクレッシェンド非常に美しく、その手の動きが間近で見られ、感動しました。(八王子市 Y.K 先生)
安川加壽子先生の歩まれてきた道がよくわかり、先生か築いてくださった礎の上に、自分たちは立っていると実感しました。(八王子市 T.N 先生)
『安川加壽子の発表会アルバム』(青柳いづみこ編 音楽之友社)
ISBN 978-4-276-45202-2