【書評】「どこまでがドビュッシー?」毎日新聞 2014年11月30日

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音楽と文学を往還し、両者をスリリングに読み解いてきた、ピアニストであり、ドビュッシー研究家でもある青柳いづみこの最新刊。

メインテーマは「音楽のアイデンティティ」にある。ドビュッシーやショパンの楽曲は、補筆したり、編曲したりしていくどの過程で、その曲の同一性を失くすのか。文学の原典研究や翻訳・翻案にも通じるトリッキーな問題を扱っている。

とくにドビュッシーのオペラについては詳論される。エドガー・アラン・ポーの『アッシャー家の崩壊』『鐘楼の悪魔』を原作に書かれながら、未完に終わるか、わずかなスケッチしか残っていないオペラ作品に音楽学者オーリッジが補筆した版、これらについて著者は細かく分析し、補筆曲に対し、「何パーセントがドビュッシー?」と問う。

作曲者と演奏者が一体だったバロック、古典期と違い、演奏家が独立した存在になった近現代のクラシックの世界には、楽譜の「解釈・表現の違い」という大問題が立ち現われた。そうしたなかで、その音楽家らしさとはどこから生まれるのか。どこまで解釈の自由は許容されるのか。音楽理論を超えた音楽書だ。(猫)

どこまでがドビュッシー?
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