【推薦】ドビュッシー演奏家としてと同じく、ドビュッシー研究家としても人後に落ちない青柳いづみこが、自ら企画・監修して、まさしく”この人ならでは”のアルバムを作った。言うまでもなく、没後満100年を迎えてのトリビュートであるが、1枚のCDにまとめられたものとして、じつに筋の通った企画である。冒頭にはラヴェル《亡き王女のためのバヴァーヌ》(連弾用編曲版)、結びにはドビュッシー《神聖な舞曲と世俗的な舞曲》(同じく)、その間を埋めるのが、まず、1920年(ドビュッシー没後2年)、パリの音楽誌『ルヴュ・ミュジカル』が企画した「ドビュッシー追悼号」に添えられた、「ドビュッシーのトンボー(墓、そして追悼曲の意)」と題する楽譜集の録音(その中のラヴェル作品《ヴァイオリンとチェロの二重奏曲》はここでは省かれているが、その代わりに、冒頭の曲が選ばれたと見られる)。これらの追悼曲の作者は、フランスのみならず国外からも多彩な作曲家たちが名を連ねている。この曲集のあと、その他の機会に書かれた「ドビュッシー讃」の作品(ピアノ曲)数編、そしてこの日本でも1935年『音楽新潮・ドビュッシー特集号』に載せられた清瀬保二、石田一郎、萩原利次たちの作品。青柳いづみこのピアノ独奏はもとより、前紀の2曲を彼女と連弾するほか、数曲を独奏する若手の西本夏生も、たいへんよく弾いているし、中で2曲の歌曲と1編の朗読を担当する福田美樹子も好演。
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