【CD評】「クロード・ドビュッシーの墓」(レコード芸術 2018年6月号)《特選盤》那須田務

【推薦】当盤は青柳いづみこが演奏と企画・監修を兼任。”ドビュッシーの墓”と題してはいるが、ドビュッシーは最後の1曲のみ。ライナー・ノーツの沼辺信一氏の解題をもとにご紹介すると、作曲家が没した2年後の1920年にパリの音楽雑誌『ルヴュ・ミュジカル』が追悼号を刊行した。評論家や友人が回想や論考を寄せ、さらに別冊の小さな楽譜集が付いていた。そのタイトルが「ドビュッシーの墓」。10人がドビュッシーを追悼して作曲した新作。この中から9曲。それにドビュッシーに捧げられたオマージュ作品。そして1935年に『音楽新潮』のドビュッシー特集号に掲載された日本の作曲家による作品が収録されている。青柳いづみこの他、ソプラノの福田美樹子、ピアノの西本夏生が参加。作曲家もメジャーな人が多いが、有名作品がひとつもない。そのためだろう、最初にラヴェルの《亡き王女のためのパヴァーヌ》の4種連弾版。ドビュッシーの追悼とは関係ないが、王女をドビュッシーに置き換えて聴くとなんだかしんみり。追悼号のデュカスへの《はるかなる牧神の嘆き》は《牧神の午後への前奏曲》に似た旋律に不穏な情念と色彩をまとわせたような曲。当然ながら追悼号には暗い曲想の曲が多く、作曲家に捧げられた曲の方がより多彩。どれも演奏者の主張を控えて淡々と楽譜のリアリゼーションに専心しているようなところがある。邦人作品には日本語歌曲もあって驚きだ。資料的価値も大きい。

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