アスリートならオリンピック、作家なら芥川・直木賞、若きピアニストなら目指す頂点は『ショパン・コンクール』。1927年創設以来、5年に1度、ワルシャワで開催され、多くのスターと多くのドラマを生んできた。
ピアノと筆を両立させる青柳いづみこが、2015年大会を現地からつぶさに批評的にレポート。同時に、この祭典の歴史と特徴も振り返る。まずは「実は出場するだけでも大変なこと」が、読者に知らされるのだ。
DVD審査を経て、予備予選から本大会へと、振り落とされていく。何が勝敗を分けるのか。明確な図式はない点、悲喜劇が生じる。「つくられた優勝者」はないのか。審査員にもインタビュー。芸術審査の難しさが分かる。
「楽器がザクザク鳴って鳥肌が立った」等、演奏のレポートの臨場感が素晴らしい。コラムでは、演奏者のハンカチの扱い方の違いを指摘するなど、ユーモアで肩の凝りをほぐず好読み物だ。