【書評】「グレン・グールド 未来のピアニスト」婦人公論 2011年10月22日号 評・豊﨑由美(書評家)

奇行で知られた天才の貌を明らかにする、迫力の評伝

グレン・グールドといえば、異様に低い椅子に腰かけ、演奏しながらメロディを口ずさみ、あいている手で指揮をするなどの奇行や、デビュー盤『ゴルトベルク変奏曲』に代表される大胆な楽曲解釈、ステージ活動からは早々に撤退し、演奏を録音だけに限ったことで知られる天才ピアニスト―というのが、多くの人が抱くイメージではないでしょうか。でも、じゃあ、なぜ低い椅子に座ったのか、なぜゴルトベルクをあんなに速く弾いたのか、なぜステージ活動をやめたのか。その答えを示してくれるのが、ピアニストにして文筆家の青柳いづみこによるこのグールド論なのです。

演奏家に限らない多彩な貌を持ち、〈一元的な価値観では説明のつかない複合体〉たるG・G。青柳さんは、彼のひとつひとつの貌を、膨大な資料や未発表音源も含む演奏の数々を参照しつつ、難解な謎に挑む探偵のように緻密かつ大胆な推理を重ねながら明らかにしていきます。リパッティやホロヴィッツといった他のピアニストとの演奏法や楽曲解釈の違いを、演奏家にしかできない具体的な解析をもとにつまびらかにし、これまでのグールド論に納得がいかなければ反証し、この天才のどこが”未来のピアニスト”であるかを訴える筆致は怜悧さと熱さを備えて迫力満点。論理性と感性を高いレベルで兼ね備えたこの評論は、G・Gのファンはもちろん、嫌いな人の胸にも真っ直ぐ届くにちがいありません。

実はわたしも生半可なファンなのですが、本書を読んで理解を深めた後に、CDを聴き直したら魅力が倍増しました。クラシックファンなら絶対に読むべき。青柳いづみこ 未来の評論家」と最大級の賛辞を捧げたくなる1冊なのです。

グレン・グールド 未来のピアニスト
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