【CD評】「6人組誕生!」(レコード芸術 2020年3月号)

濱田滋郎

<推薦>世に名高い、20世紀前半の「フランス6 人組」……しかし、これにまつわる諸事情を知るにつけ、--当ディスクの解題(椎名亮輔氏による)を読んでもわかるとおり--この集団が、ある確固とした信念を抱く音楽家たちの集いというわけではなく、むしろ「あれは何だったのだろう」とすら思わせる、”いい加減な”実体しか持たなかったものであることに気づかせられる。が、何はともあれ「6人組」は”あの時代”のシンボルとして確かに存在したし、このグループを抜きにして20世紀フランスの音楽を語れぬことも確かである。当アルバムは、6人組の、うちミヨー、プーランク、タイユフェール、デュレー 、オーリックらによるピアノ連弾曲、オネゲルによる独奏曲、彼らの”師表”であったサティの”1幕の現実的なバレエ”である《パラード》(連弾による)、そして、6人組が6人揃って残した唯一の仕事だったと言える1920年の《6人組のアルバム》(独奏による)を含んでいる。何よりも、全体のプロデュースそして演奏に当たるのが、これまでもいくつかの”味な”企てを公にしてきた青柳いづみこ、髙橋悠治のコンビであることが、アルバムの価値をそっくり担うファクターとなっている。2人は連弾のほか、曲によってソロを披露するが、いずれの場合も豊かな”腹芸”とでも言うべきものを発揮する、練達の”わけ知り”ぶりを示して、聴きてを掌中のものとしてしまう。6人組に彼らあり。この雰囲気、”空気感”をこれ以上に表現できる者らはあるまい。

那須田努

<推薦>洒落たアルパムである。フランス6人組が誕生した頃の1916年から20年に世かれた作品、たとえば6人組結成のきっかけとなったサティの《パラード》と《6人組のアルバム》をメインに各人の作品が収録されている。オリジナルのピアノ曲、4手連弾の他、歌曲や管弦楽曲の連弾版も取録。最初にメインの2つについて述べると、パレエ・リュスによって初演された《バラード》は通常の6曲に加えて作曲者の自筆譜に基づきドゥロールとヴォルタによって復元された2つの遺作を含む完全版(全10曲)。冒頭〈コラール〉が厳かに鳴り響く。〈赤いカーテン〉は割合に遅めのテンポでそれほどがちゃがちゃやらない。他の曲も古雅な趣が1920年代のパリの雰囲気を伝えているようで楽しい。《6人組のアルバム》は高橋のソロ。各局の性格がエッセンスの次元まで絞り込まれていると問時に名状しがたいアトモスフェレが漂う。連弾曲のミヨーの《子供のために》はイメージのひろがりとカラフルな音色が、プーランクの《4手のためのソナタ》は思い切りのよい表現でユニーク存在感が、タイユフェールの《イマージュ》はしなしなとしたオリエンタルな響きが印象的。デュレーの《2つの小品》は乾いたタッチが面白い。青柳がソロのオネゲルの《7つの小品》など各人の個性の違いがよくわかる。椎名亮輔氏の「6人組誕生!」はそもそも6人組とは何だったのかについて考えさせられて興味深い。筆者の今月のベスト2の1つ。


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