【CD評】「6人組誕生!」(サライ 2020年5月号)

今月の推薦盤 林田直樹

異質な二人の共演が織りなす自由な世界でレザネ・フォル(狂乱の時代)を追体験

文筆家でピアニストの青柳いづみこ、作曲家でピアニストの高橋悠治-屈指の言葉の使い手でもある、異質な二人の音楽家が、火花を散らしながらも、近年共演を重ねているのは興味深い。その最大の成果のひとつが、「6人組誕生!」である二つの世界大戦に挟まれたひとときの平和は、「レザネ・フォル(狂乱の時代)」と呼ばれた文化の最盛期でもあった。本作では、当時の新進気鋭のフランスの作曲家たち(ミヨー、プーランク、タイユフェール、デュレ、オネゲル、オーリック)、およびその主導者だったサティのバレエ音楽「パラード」が集められ、その時代を追体験させてくれる。どの曲もとぼけたユーモアにあふれ、軽く洒脱で、自由な遊びの精神に満ちている。個々はバラバラなのに、共通の気分の中に不思議にまとまっている。近頃の日本は何かと「一つにまとまる」ということが安易に叫ばれるが、この、統制も支配もされない活気に学ぶべき点は多い。繰り返し聴くほどに味わいの深まる一枚だ。


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