【書評】「グレン・グールド 未来のピアニスト」日本経済新聞 2011年7月27日夕刊 評・井上章一

艶を捨てたクリエイター

私事にわたるが、私はこれまでグレン・グールドというピアニストをきらってきた。たまさか耳にしたモーツァルトのCDに嫌気がさし、その後は聴かずぎらいをとおしている。青柳いづみこがとりあげなければ、グールド論の本など、読むこともなかっただろう。

グールドは、バッハのフーガを理知的にとらえた録音で、脚光をあびた。しかし、艶のある音でショパンをうっとりひびかせる腕も、なかったわけではない。初期の音源に耳をすませれば、けっこうロマンティックなグールドとも、であえる。 けっきょく、グールドは、自分のそういった部分を、おし殺していったのだ。あえて、グールドになる途を、えらんだのである。モーツァルトのソナタを異様なテンポでとばしてしまうのも、その必然的な帰結にほかならない。

では、いったいなぜ、ピアニストは、そんな途へ自分をおいこんだのか。著者は、グールドの奏法と、彼のクリエーター気質に注目する。また、そこへ20世紀の演奏史が、どうかかわったのかにも光をあてた。表現へいどむ者をとりまくせつない状況が、あざやかにうつしだされている。

(評価 ★★★★★:これを読まなくては損をする)

グレン・グールド 未来のピアニスト
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