【関連記事】「文学キャバレ『黒猫』から生まれた音楽」ショパン 2012年9月号 インタビュー

始めに:ドビュッシーって、いったい何だろう?

今年生誕150年を迎えるフランス近代の大作曲家。
感性重視の印象派の仲間のように思われているけれど、実は知性重視の象徴派の詩人たちと親しく交わって数多くのコラボを試みた。

バッハやルネサンス音楽を愛し、多くのものを採り入れたが、また、モダンな音づかいで20世紀音楽への扉を開いたと評価されている。夢のように美しい曲を書いたと思われているが、本人は、気味の悪いものが大好きだった。

貴族趣味でハイソなイメージがあるが、大衆演劇を偏愛してミュージックホールやレビュー小屋に通い、その音楽は、映画やコマーシャルにもよく登場する。
どんな定義づけもすりぬけてしまう多面人間。
ドビュッシーの全貌は、きっといくつもの項目をクリックしていくことによって、はじめて明らかになるのだろう。
何が出てきてもビックリしないでください。

Interview:9月に生誕150周年記念コンサート2夜を開催
「若きドビュッシーのいた『黒猫』を体感してほしい」

文・写真◎編集部 原口啓太

日本のドビュッシー研究の第一人者であるピアニスト、文筆家の青柳いづみこさん。記念年で多くのドビュッシー企画にかかわっているが、その白眉と言っていい自主企画が、9月21日と28日の両金曜日の夜に浜離宮朝日ホールで行われる(詳細は公演情報参照)。

第1夜は新たにレコーディングした《前奏曲集第2巻》全曲とサティ、シャブリエ作品もまじえた演奏会。注目は第2夜。歌曲が中心で、ドビュッシーの作品以外に彼と文学キャバレー『黒猫』でかかわった芸術家の、本邦初演も含む音楽作品が聴ける。もちろん青柳さんの解説付き。さらに当時『黒猫』で上演された画家・版画家のアンリ・リヴィエールの影絵芝居も復活上映されるので、思い切り『黒猫』に浸れる、特別な一夜となりそうだ。

以前に『パリの詩人たちとドビュッシー』というコンサートを企画しました。少しむずかしくなりすぎたので、今度はサティやシャブリエなどもからませて、親しみやすい企画にしたかったんです。一言で言えば、大詩人もいたけれど、売れない芸術家やオカルティストも集った、リベラルで猥雑な『黒猫』の青春群像を、肩の凝らないカフェコンセール(音楽喫茶)ふうに再現しようという2夜です。

第1夜の前半は、8月に発売されるCDでメインに置いた《前奏曲集第2巻》。これはちょっと専門的ですが、後半はサティの〈ジュ・トゥ・ヴ〉やシャブリエがワーグナー《トリスタンとイゾルデ》をパロった連弾曲とか、親しみやすい選曲です。もちろん彼らも『黒猫』に出入りしていました。

第2夜でご紹介する影絵芝居は、たまたま『黒猫』とモンマルトルをテーマにした展覧会で上演されているのを見たんです。母校の藝大の環境創造学科が再現したもので、教え子である下山静香がピアノを弾いていたので、彼女を通じて映像を借りることができました。音楽も当時の再現です。パリ国立図書館の音楽部門には、『黒猫』で歌われていたシャンソンの楽譜というのがきちんと保存されているんです。『黒猫』の作曲家がボードレールやマラルメのような大詩人の詩に曲をつけた歌曲もあり、これらはみんな本邦初演です。同じ詩にドビュッシーが作曲したものもご紹介します。もちろん、〈月の光〉や〈マンドリン〉など『黒猫』がらみの有名曲も。ドビュッシーの歌曲は立派なものですが、他の作曲家たちのは、まあ聴けるていど(笑)。

『黒猫』は、19世紀末の文化を推進した溜まり場でした。おしゃれなパリのイメージとはまったく違う、デカダン的な雰囲気をリアルに味わっていただけたらと思います。若き日のドビュッシーはその渦中にいたんですから。

文学キャバレ『黒猫』から生まれた音楽
公演詳細▶

コンサート関連記事 ランダム5件

新メルド日記
コンサートTOP

コンサート関連 最新5件

チケットのご注文

当ホームページからもチケットのご注文を承っております(公演による)。詳しくは各公演の詳細ページをご覧ください。

Top