【関連記事】「文学キャバレ『黒猫』から生まれた音楽」読売新聞大阪版 2012年5月21日朝刊 文・渡辺彩香

500円で一流の音楽を楽しみませんか—。大阪大豊中キャンパス(豊中市待兼山町)の大阪大学会館でほぼ毎月開かれている「ワンコイン市民コンサート」が今月、開始から1年を迎えた。海外で活躍する演奏家や新進気鋭の若手らが毎回異なるテーマで演奏を披露。格安で聴ける気軽さもあって、繰り返し足を運ぶ音楽ファンが多い。1周年を記念して26日には、ピアニストで文筆家の青柳いづみこさんを招き、19世紀末のパリを舞台にしたクロード・ドビュッシーの世界に迫る。

同大学名誉教授で、理学博士、ピアニストでもある荻原哲さん(64)が「音楽を通して、地域と大学とがつながれば」と、昨年5月に始めた。出演者選びやテーマ構成、パンフレット作りまで全てをこなす。「演奏家とテーマを練り、プログラムを完成させる。本番では演奏家のトークにも注目して」と語る。

会場は、同会館2階講堂で、バルコニー席を含めて460席。1920年にウィーンで製作された世界3大ピアノの一つ、ベーゼンドルファーを常設し、「当時の作曲家らが求めた音色がそのまま再現される」と好評だ。これまでに延べ2300人が来場した。

17日には12回目として、チェリスト・平野玲音さんのリサイタルが開かれた。ピアノにウィーン国立音大教授のペーター・バルツァバさんを招き、ヒンデミットの「幻想小品」など4曲を共演。近くに住む女性(75)は「夫と校内を散歩しながら、普段着で来られるところがうれしい」。箕面市から母親と訪れた女子高生(17)は「目の前で素晴らしい生演奏が聴けて感激した」と喜んでいた。

◇◇◇

26日は午後3時からで、テーマは「『黒猫』詩人たちとドビュッシー」。パリの文学キャバレー「黒猪」の常連だったドビュッシー(1862~1918) が、そこに集まる作曲家や詩人、画家との交遊の中で空み出した作品を、ピアノや歌で表現する。

青柳さんは今年の「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャパン<熱狂の日>音楽祭」にも出演したピアニストで、ドビュッシー研究家。「黒猫は最先端の文化の発信地だっが、気取ったところがなかった。演奏会もクラシックやフランス文学と構えず、気軽に笑いに来てほしい」と話す。

文学キャバレ『黒猫』から生まれた音楽
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