【コンサート評】「うたうリスト」音楽の友 2012年2月号 評・小山晃

音楽之友社創立70周年とリスト生誕200年記念の一環として、青柳いづみこ企画・ピアノで「うたうリスト」が催された。つまりはリストの歌曲を軸にしたコンサートである。

歌い手は2人。青柳が一番に推挙の若手力ウンターテナーの俊才村松稔之とキャリア重ねるバリトン和田ひでき。だが、歌うリストとしながら当初からリスト歌曲を聴かせず、青柳のピアノで《愛の夢第3番》が弾かれた後、メンデルスゾーン《歌の翼に》、シューマン《献呈》など当時のリストの周囲の歌曲。なかなかに捻っている。

歌唱は村松だったが、カウンターテナーの声は大変柔軟であり発声も安定、加えて曲調、詩情を充分に歌い出していた。彼はすでにタイトルを幾つも受賞しているが、確かに滑らかな声と共に音楽牲、感性の芳醇さがうかがえた。将来性確実であろう。リストがピアノに編曲した他の作曲家の歌曲も多いが、青柳が先のシューマン《献呈》などのピアノ版で別の美質を明らかにした。和田による《夢に来ませ》《おお愛しうる限り愛せ》でリスト歌曲の繊細な詩情を伝えた。

うたうリスト
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