【コンサート評】《樹原涼子》を弾きたいVol.4(音楽の友2024年5月号)

第4回樹原涼子を弾きたい 青柳いづみこを迎え、楽曲の様々な表情を魅せる

「樹原涼子を弾きたい」は2017年から開始したトーク・コンサート・シリーズ。ゲスト・ピアニストが作曲家・樹原涼子の作品を演奏し、作曲家と演奏家がそれぞれの視点から楽曲について語り合う。第4回は青柳いづみこをゲストに迎え、樹原涼子「ピアノ曲集《やさしいまなざし》」と「連弾組曲集《時の旅》」が演奏された(3月7日・カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」)。《やさしいまなざし》では青柳の音色の美しさと細やかなニュアンスの魅力が存分に発揮されており、旋律の方向性はもちろん、ハーモニーの変化による心情や場面の変化といったものが鮮やかに聴こえてくる演奏であった。冒頭で演奏された〈ふたり〉は左手のみの楽曲だが、柔らかあな腕運び、繊細な指のコントロールによって、多層的な響きが作り出されていたのがとくに印象深い。後半は、近年青柳が様々な場でデュオを組んでいるピアニストの西本夏生を迎えての《時の旅》。子供のための〈小さな時間旅行〉と大人向けの〈美しい時間〉、二つの曲集が収録された連弾曲集である。〈小さな時間旅行〉は作曲者の樹原地震による朗読もはさみながら進行し、旋法を使った楽曲が物語のように展開。二人の音色が非常にコントロールされた響きのなかで溶け合う様子が魅力的であった。〈美しい時間〉は高度な技巧が散りばめられた作品だが、それらを両者とも鮮やかに弾きこなしつつ、それらを両者とも鮮やかに弾きこなしつつ、楽曲の世界観を見事に共有した演奏。即興性も感じさせるアンサンブルで、楽曲の輪郭を丁寧に浮き上がらせながら、様々な表情を見せてくれた。(長井進之助)

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