【関連記事】「ピアニストが見たピアニスト」出版記念リサイタル 読売新聞 2005年9月13日夕刊 インタビュー 聞き手・松本良一

「世界中同じ弾き方」に危機感
  物書き兼ピアニスト、青柳いづみこさん

ピアニストがエッセーや評論でも定評のある青柳いづみこさんが今年でピアニスト・デビュー25周年を迎えた。近著『ピアニストが見たピアニスト』(白水社)も好評だ。
16日に東京築地の浜離宮朝日ホールで開く記念演奏会を前に、感慨を聞いた。

『ピアニストが見た・・・』は、演奏家の視点からみた名ピアニストの演奏分析を通史で独自の演奏芸術論を展開した力作だ。

自ら「私のすべての根源は音楽」と言い切るだけに、芸術家の全存在をかけた行為=演奏を本にまとめるにあたって、「舞台裏のエピソードを並べただけのものにはしたくなかった」という。多くの読者は、天才のみがなし得る名演の裏に数多くの人間的苦悩があることを知って驚いたかも知れない。だが今日のクラシック演奏家を取り巻く状況は、「天才もまた人間である」といった常套句で締めくくれるほど甘くない。

「8年前に最初の本格的な音楽評論を出した時、一度は演奏活動を断念しようと思った」という。近年は演奏家の意向よりレコード会社の販売戦略が優先される傾向が強まり、ワールドワイドの”規格”に合わない演奏家は世に出にくい。「私自身、演奏家の置かれた状況に絶望しながら仕事をしてきた」と明かす。

「『言葉の壁』がない音楽家は本来、”文化のバイリンガル”として活躍できるはずなのに、世界的に見て演奏の画一化が進んでいる」。創造性が衰退しつつあるようにみえる演奏芸術の未来に、強い危機感を抱いている。

16日の演奏会ではラモーとドビュッシーを弾く。「ドビュッシーはライフワーク。今後も研究と演奏の両方を続けたい」。もう一つのライフワークは「文学と音楽のはざま」を探ること。E・T・A・ホフマンとシューマン、ランボーとドビュッシー・・・。

同じ時代を生き、お互いに影響を与えた作家と作曲家のつながりを解き明かしたいと話す。
「これは物書き兼ピアニストの私にしかできない仕事だと信じています」

『ピアニストが見たピアニスト』出版記念リサイタル
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