ぴーぷる欄
ドビュッシーとラモーの関係は、単に前者が『ラモー讃』というオマージュを書いたというだけではなかった。そこにはフレンチ・ピアニズムを理解するための秘密が・・・。ドビュッシーの研究と演奏を字句に、文筆も含めて広いフィールドから音楽を追求している青柳いづみこは、これまでもCDや著書、レクチャー・コンサートなどでさまざまなサジェスチョンを与えてくれた。演奏および文筆活動25周年となる今年は、フレンチ・バロックの代表的な作曲家であるラモーと、彼のクラヴサン曲に焦点を当てているようだ。
「19世紀末にパリで開催された万博で、クラヴサンの復興コンサートが行われ、おそらくドビュッシーも聴いていたのではないかと思います。そのコンサートや演奏が原題にまで続くフレンチ・ピアニズムに大きな影響を与えており、カザドシュやコルトーなどたくさんの有名なピアニストがその系譜に名前を連ねていますが、ピアノで演奏するラモーやクープランは、装飾音やペダルの使い方などに特徴があるプランスのピアノ・スクールの大きなカギを握っていると思えるんです」
日本では故安川加寿子がその流れを継承しているが、安川門下である青柳もまたファミリー・トゥリーの一人なのだ。9月に行われるリサイタルでは、ラモーとドビュッシーの関係にテーマを迫る。
「ドビュッシーの作品におけるクラヴサン的な装飾音法や、和声が旋律を生み出す手法、クラヴサンの2段鍵盤を思わせる白鍵と黒鍵の交替など、たくさんの共通例がありますね。コンサートでは実例をあげながらそれを解明し、後半では影響があちこちに観られる『前奏曲集第2巻』を弾きます。これからドビュッシーを弾こうという方にも、聴いていただきたいですね。
ショパン本人のピアノ演奏スタイルとも共通する部分があるんですよ」同時期にはラモーの作品を収録したCD(コジマ録音)もリリース予定。まさに温故知新の精神が光る、重要なコンサートになるはずだ。