推薦 古今東西を問わず、音楽は自明のように物語を表してきた。とはいえ、実際に生命を吹き込むのは奏者。青柳いづみこと高橋悠治による新譜はまさに、大小様々な空想の世界を音で描き出す。イベールのピアノ独奏曲《物語》は、短い表題を持つ10の小品で構成。青柳の演奏では各要素が生き物のように動き回り、アニメーションを見るかのよう。シュミットの《小さな眠りの精の一週間》はアンデルセン童話が題材。連弾による重厚な響きが原作の深淵に迫る。ミヨーの《ボヴァリー夫人のアルバム》では青柳が朗読を、高橋がピアノを担当。夫人の満たされない日常を言葉が紡ぎ、音楽がその行間を埋めていく。次々とイメージが溢れ出てくる1枚だ。(☆能登原由美)
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