【書評】「ショパン・コンクール見聞録 革命を起こした若きピアニストたち」(モーストリークラシック2023年3月号 江原和雄)

参加者のリアルな生態

著者はピアニストだが、多数の著書を持つ。本書は、一昨年10月に開催された第18回ショパン国際ピアノコンクールを専門家の目で見た詳細なレポート。日本人コンテスタントのリアルな生態が浮かび上がる。

コンクールの優勝は中国系カナダ人のプルース・シャオユー・リウ、2位は反田恭平とイタリア=スロベニアのアレキサンダー・ガジェヴ。3位はスペインのマルティン・ガルシア・ガルシア。4位は小林愛実とポーランドのヤクプ・クシュリック。日本人2人が入賞し、日本では大いに盛り上がった。「かつてない完成度とレヴェルの高さで、稀に見るコンクールになった」と著者はつづる。ゆえに2 位と4 位が2人ずつという前代未聞の結果になったのだろう。

反田のショパン・コンクールヘの「傾向と対策」をつまびらかにする。留学したモスクワ音楽院を2年半で中退、ショパン・コンクールに焦点を絞り、ショパン音楽大学に変え、パレチニに師事した。そして肉体改造。ジムに通いトレーナーを付け筋肉を鍛えた。さらにデータ。2010年と15年の参加者のプログラムを調べ、ラウンドごとの演奏曲と通過者を統計にとり、自分に合う楽曲を選んだ。これらの準備に6年かけた、という事実に驚かざるを得ない。

コンクールはすべてインターネットで世界に配信された。「動画配信の落とし穴」を指摘する。4kカメラ6台で収録された映像は、会場のワルシャワ・フィルハーモニーに来られない聴衆も楽しませた。しかし、ホールと配信の音は大きく違ったという。

なお副題の「革命を起こした若きピアニストたち」とは言い過ぎだと思うのだが、いかがだろう。2025年の第19回コンクールで新たな優勝者、入賞者が出る。そのとき本書に登場したピアニストたちはどういう形で残っているのだ。

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