【書評】「ピアニストは指先で考える」読売新聞 2007年6月13日朝刊

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世界的な女性ピアニストの演奏会で、楽屋にもぐり込んだことがある。開演直前、舞台に通じる通路を落ち着きなく歩き回る彼女とばったり目があった。その瞬間、「私はあなたに何をしてあげられるの!」。不安でいっぱいの表情で話しかけられた。それから数分後、彼女は舞台へ出て行き、持ち前の奔放な情熱と完璧(かんぺき)な技巧で客席をまたたく間に席巻した。

この本にはピアノを弾くことに関する具体的な話がたくさん出てくる。ツメの切り方、イスの座り方、クツの選び方……。ピアニストである著者は、演奏の出来を左右するこれら一つ一つをていねいに解説してくれる。門外漢でも、演奏会でピアニストを「見る」のが楽しくなること請け合いだ。

演奏家にとって一番大事なのは、作曲家の傷つきやすい心理のひだに分け入り、喜怒哀楽を共に歌い上げること。そのためには「不安」や「恐れ」を全身で感じ、受け止める繊細さが必要だと著者は言う。それを乗り越えた先に生まれるものが、先に紹介したような天才の芸術なのだ。(良)

ピアニストは指先で考える(単行本)
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