【書評】音楽で生きていく! 10人の音楽家と語るこれからのキャリアデザイン(潮2020年2月号)

スポーツ、芸能、芸術と一芸に秀でた無数の人の中から、プロになれるのはほんのひと握り。高い峰に立てるのはさらに限られた人だけだ。志半ばで、いくつもの峠、難所、悪天候に振り落とされていく。あきらめるほうが簡単で楽かもしれない。本書に登場する10人の音楽家は、いずれも20代終わりから30代前半の、若き成功者たちである。夢をあきらめず、好きな道で生きていくための「キャリアデザイン」を語る。

演奏家、作曲家、歌手、指揮者とジャンルは多彩だが、不思議なほど高い峰に立つ者たちの言葉は似ている。日本では特に環境が厳しいオペラ歌手として、国際舞台で活躍するのが脇園彩。理想の実現のためにどんな努力をしたのかの質問に「とにかく焦らない。ほんと芸術って繊細で、時間をかけなくちゃいけないから、余裕を作ること」、そして「変化を恐れないこと」が大事だと答える。ありきたりに聞こえるかもしれないが、いずれも挑戦しつづけた者の実感であることを忘れてはならない。

打楽器奏者として、数々の新曲の初演をこなしてきた會田瑞樹。まだ少年の面影を残すが、国境やジャンルを超えた活動をしている。父親に言われた「音楽は農業みたいなもんだろう」という言葉を忘れない。種を蒔いてもうまくいかないこともある。新作は「一緒に経験を積んで、育てている」感じが似ていると思った。

これらは全て、自身が演奏家で文筆家でもある著者だからこそ引き出せた言葉たちだ。中二で和声法を学び、作曲にのめりこんだ森円花は、「美しいと思っていた感覚的なものには、すべてその理由が」ある、と答えている。青柳いづみこの巧みな誘導で胸の内から湧き出した名言かと思う。

天才ピアニストの田村響は、師ソアレスから「ヒビキ、生き急がないで」と諭された。音楽が別個にあるのではなく各個人の人生と直結している。だから人を感動させられる。音楽家志望のみならず、若い人全員に読んでもらいたい。

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