【書評】「我が偏愛のピアニスト」MOSTLY CLASSIC 2010年11月号

ピアニストから見たピアニスト 日本人中堅10人の人生をのぞく

中村紘子は「ピアニストという蛮族がいる」と書き記したが、本書には「蛮族」は登場しない。取りあげられているのは、岡田博美、小川典子、小山実権恵、坂上博子、廻由美子、花房晴美、柳川守、藤井快哉、海老彰子、棟木繁夫。中村が書いたピアニストたちとは生きた時代が違う。

ピアノ情報誌「ムジカノーヴァ」の連載を加筆したもの。著者が先に挙げた「偏愛する」ピアニストたちにインタビューを行い、原稿にまとめた。メディアへの露出度の差はあるものの、みな中堅のピアニストたちばかりだ。一般の読者にしたら知らない名前が多いかもしれない。

著者は「日本のクラシックのピアニスト、とくに中堅の演奏家は、本当に報われない存在だと思う。メディアはいまだに外来指向が強く、新開や雑誌の限られた誌面は来日演奏家の記事で占められている」。この中堅のピアニストたちの喜びや悩みを一人でも多くの人に知ってもらいたいという。

著者はドビュッシーなどの演奏で知られるピアニスト。同業者ゆえの視点や分析、感想などがおもしろい。たとえば、小山実稚恵の手の鍵盤の移動について。動体視力がとてもよい小山は、鍵盤の蓋に自分の手を写して、見ながら弾いていた。手の感覚で動かすことを知ったのは、最近だというから驚きだ。また3と4の指、中指と薬指の機能がまったく互角だから、和音もさまざまな指の組み合わせで弾けてしまう。このように、ピアニストの秘密を解き明かしてくれる。

「3歳から今まで反抗期」という坂上博子、スポーツ少年として育った藤井快哉、動物や昆虫が好きで「野生児」だった海老彰子ら、それぞれの人生が興味深い。それが演奏に反映されているのだろう。

我が偏愛のピアニスト(単行本)
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