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ピアニストは、親指、爪、関節、足などをどのようにして駆使して演奏しているのだろうか。演奏家であり文筆家としても活躍する著者が、その身体感覚を子細に解きあかしたエッセー集。
ピアノの奏法には、指をしっかり上げで指先で鍵盤にタッチする「曲げた指」と、脱力した状態で指の腹でタッチする「のばした指」とがある。フランス近代を代表する「印象派」のドビュッシーとラヴェルは、ともにピアノを弾きながら作曲した。ドビュッシーはやわらかい手をした「のばした指」派、骨ばって固い手のラヴェルは「曲げた指」派で、その身体的特徴も作品に反映されていて、ふさわしい演奏方法が違ってくるという。
素人は演奏技術の繊細さに驚くばかり。名演奏家のエピソードも楽しい。何より、聴く楽しみが広がる一冊だ。