前著『水の音楽 オンディーヌとメリザンド』の中で、ヨーロッパの神話、文学、音楽などに登場する“水の精”の誘惑のさまを軽妙に分析して見せた著者が、古今東西の25人のファム・ファタル(宿命の女、運命の女)を紹介するエッセイ集。タイトルを太宰治の『お伽草紙』「カチカチ山」の一節からとった本書は、さまざまな小説やオペラに現れる、美しくも恐ろしい女性たちの本性を女性ならではの視点で解き明かします。
目次
第1章 無邪気と悪魔は紙一重
兎とアンドロメダ 太宰治『カチカチ山』
網をはる女、出かけていく女 泉鏡花『沼夫人』
無意識の悪 阿部次郎『三太郎の日記』
第2章 ファム・ファタルは男だった?
乳房と知性 M・G・ルイス『マンク』
六面体の女 渡辺淳一『阿寒に果つ』
オム・ファタル アベ・プレヴォ『マノン・レスコー』
ファム・ファタル劣等生 メリメ『カルメン』
女のやり方 サロメ百態
第3章 こばみ、じらす女たち
派遣ファム・ファタル シュー『パリの秘密』
観察された肉体 谷崎潤一郎『痴人の愛』
こばむ女 出口裕弘『京子変幻』
貞操帯の女 ピエール・ルイス『女と人形』
性のない女 ハーディ『日陰者ジュード』
第4章 子宮は翻弄する
女郎蜘蛛 有島武郎『或る女』
ヒステリーの女 宇野浩二『苦の世界』
受け唇の女 椎名麟三『永遠なる序章』
究極のエクスタシー フロベール『サランボー』
第5章 美しき勘違い
女はみんなこうしたもの マンシェット『眠りなき狙撃者』
処女懐胎 ムージル『トンカ』
見えすぎる女 モーリャック『夜の終り』
リヴァリテ 藤田宜永『求愛』
第6章 オペラになったファム・ファタル
かみあわない女 ドビュッシー『ペレアスとメリザンド』
受け身の悲劇 ベルク『ルル』
オペラと原作 悪女度くらべ
ファム・ファタル役の鑑 マリア・カラス
発 行 | 2001年4月25日 |
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著 者 | 青柳いづみこ |
発行所 | 白水社 |
定 価 | 本体1900円+税 |