推薦 没後百年記念アルバム。ドビュッシーの愛したベヒシュタイン(1925年製)を使っての響きの美しさが際立っている。高音の煌めきとバスや内声の奥行きと広がり、全体の透明感と弱音の終結の長く伸ばす余韻と余情。いずれもドビュッシーの響きによく合っているばかりか、今までにない新たな可能性に気づかせてくれる。《前奏強》第1巻「帆」は揺らめく布だけでなく、ヴェールを使った激しい踊りでもある。「雪の上の足跡」は凍てつく雪景色が寒々とした心の中心であり、寂寥が旨に突き刺さる。「とだえたセレナーデ」からはギターの響きやスペインの空気が漂ってくる。《聖セバスチャンの殉教》は原曲よりも暗示的で示唆に富む箇所が多く興味深い。 ☆横原千史
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