【CD評】「ドビュッシーの夢」(NIKKEI STYLE 2018年5月)

クラシックCD 今月の3点

青柳は演奏と楽曲分析、評伝やエッセー、研究書の執筆を同時にこなす才人ピアニストの評価を平成の時代に確立したが、ストライクゾーンは間違いなく、ドビュッシーにある。フランス帰りの名ピアニスト安川加寿子の門下生となり、仏マルセイユに留学するより前、中学生時代に魅せられて以来、ドビュッシーは青柳の「恋人」となった。すでに何点かの録音、書籍を発表、没後100年の今年も「ドビュッシー最後の一年」を執筆するかたわら、「前奏曲集第1巻」の22年ぶりの再録音に踏み切った。

前奏曲集だけでは40分前後にしかならない。青柳は、ドビュッシーが死の5カ月前にオペラ化の意欲をみせていた劇付帯音楽「聖セバスチャンの殉教」のアンドレ・カプレによるピアノ独奏用編曲、ボヘミアン生活を送っていた時代の小品「夢」とドビュッシーに傾倒した同時代のハンガリーの作曲家ゾルタン・コダーイの「ドビュッシーの主題による瞑想(めいそう)曲」を併録曲に選んだ。スペシャリストの面目躍如である。解説には「サティが『過剰なほど大きな自信をいだいていた』と評したあなた(=ドビュッシー)が見た夢のほんの一部かもしれませんが、あなたが成し遂げようと願った計り知れないもの、他の誰にもできない音楽のありようを垣間見ることができて幸せです」と、記した。

ドビュッシーの夢の軌跡を一音一音確かめ、慈しみ、かみしめるように奏でる青柳の演奏は味わい深い。その味わいには、録音に使用した楽器が一役買っている。ドビュッシーは仏プレイエルのほかにブリュートナー、ベヒシュタインと2台の独製ピアノを所有していた。青柳はドビュッシーの作曲書法の特殊性が「ベヒシュタインに合う」との判断に基づき、1925年製E型のベヒシュタインを録音会場の相模湖交流センター(神奈川県)に持ち込み万全を期した。(コジマ録音)

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