【書評】「我が偏愛のピアニスト(文庫)」ショパン 2014年3月号

ピアニストでありながら、優れた文筆家としても知られる著者が、タイトル通り、自分の感性に響くことを基準にピアニストを選び、話を聞いて、そのピアニストの演奏を論じながらまとめた雑誌連載の集成。登場するのは、岡田博美、小川典子、小山実稚恵、坂上博子、廻由美子、花房晴美、柳川守、藤井快哉、海老彰子の各氏と、最後に著者と同級生の練木繁夫さんとの対談が収められている。2010年刊の単行本の文庫化。

本誌読者にはおなじみのピアニストばかりだろう。コンサートピアニストの現場を知っている話し手と聴き手が語る本音の話はすべておもしろく、ピアノ演奏に対してのピントに満ちている。だが、最も感銘を受けるのは、芸術家としての生き方だ。ここに提示されているのは、少なくとも中年以上の方ばかり。何かと脚光を浴びる若い時期を経て、キャリアを重ねて行くことにより、自らの活動に1本の芯が入っているのは誰も同じ。だが一様では無い。あらためて彼らの演奏にも触れたくなる。

我が偏愛のピアニスト(文庫)
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