推薦:D番号は384・385、408で、いずれもシューベルトが19歳の時に書いたソナタである。ベートーヴェンよりもどちらかと言えばモーツァルトにシンパシーを抱いていたシューベルトだけあって、この初々しい青年期の作品の中にも、その思慕や影響は随所に聴き取ることができる。しかし、そこまではよくある話。驚くのはこれらの作品の一見古典的なフレームの中に、早くも次代の語法、それもシューベルト独自のものが歴然と示されていることだ。例えばOp.137-2の第1楽章冒頭。当時としてはあろうことか、4・7・9度、または減音程、さらに2オクターヴといった大胆過激な音程の跳躍が頻出し、引き裂くような劇性を獲得している。さらにOp.137-3の第2楽章中間部における魔術的な転調の美も、かつて聴いたことのないような感銘を与える。さてそうした数々の突出した美質を持つ作品をどう聴かせるか。これが二人のべてらんの腕の見せ所である。まずその音。ヴァイオリンもピアノもあまり湿度を含まず、むしろ乾き気味と言えるかもしれない。そしてその音に、いかにもの身振りを纏わせないので飾り気なくシンプルでピュアである。もっと技術を際立たせ、華麗な効果を持たせた演奏もできるのかもしれないが、ジョヴァニネッティと青柳はそれをしない。だがそうした謙虚で真摯なスタイルこそが、作品の素晴らしさをくっきりと描き出しているのではないか。永く聴き込むに堪える良い仕事だと思う。(石原立教)
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