【CD評】「浮遊するワルツ」音楽現代 2004年1月号 評・青澤唯夫

今月の3枚のCDより

推薦

作家ピアニスト、青柳いづみこの「浮遊するワルツ」は、凝りに凝ったCDだ。
選曲も演奏もリーフレット(エッセイが素晴らしい)も。
演奏は大人の女性の成熟した表現で、作品の想いがあふれんばかりだ。
彼女が作家だから言うわけではないが、文章の行間を読ませるように、音と音の間にもある種の情念がぎっしり詰まっている。

ショパンのワルツでは変ホ長調の大ワルツや嬰ハ短調の曲などよりも、イ短調のワルツのほうが彼女の特質がよく現れていて聴きものだ。変ホ長調の曲などはルービンシュタインやリパッティやフランソワなどの個性的な名盤が同じような価格で購入できるわけだから、このCDの推薦理由としてあえて書いたのだが。

シューベルトの「高雅なワルツ」とラヴェル「高雅で感傷的なワルツ」、それにサティの「嫌らしい気取り屋の三つの高雅なワルツ」まで納めた選曲の妙も、それぞれの特質を聴かせる演奏設計の見事さでよく活きている。「メフィスト・ワルツ」は高度な技巧を織り込んでよく弾きこまれているが、そのあとのドビュッシーになって表現に余裕が出てくるのは、長年手の内に納めてきた曲だからだろうか。

浮遊するワルツ
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