【推薦】今月、2人の若いアーティストと共に、好企画かつ監修のアルバム『ドビュッシーの墓』を公にした青柳いづみこが、ここにさらにもう1枚、こちらは彼女のソロ・アルバムとなる『ドビュッシーの夢』を出し、没後100周年を迎えた楽匠への敬慕・鑚仰の念を高めている。曲目は、CD後段に《前奏曲集》第1巻全12曲を置き、前半はドビュッシーが劇付随音楽のかたちで書いた《聖セバスティアンの殉教》(カプレによるピアノ独奏版)6曲、初期の作《夢》(なかなかの佳作に思えるが、ドビュッシー自身はその価値を認めなかったという)、そしてドビュッシーに敬意を抱いた一人、コダーイの作品で《ドビュッシーの主題による瞑想曲》。この前半は興味を惹くプログラムではあるが、《聖セバスティアンの殉教》の音楽は、ピアノ・ソロになると(筆者の耳には)あまり魅力的な楽曲とは聞こえない。対して、《前奏曲集》の博してきた名声は、やはりだてではない。加えて青柳いづみこの演奏が第1曲から第12曲まで文字どおりすべてにわたって、この人ならではの周到な濃(こま)やかさを息づいており、間然とするところもない。たんにムードがある、と言うにとどまらず、楽曲それぞれに、ドビュッシーの意図した構造上、デザイン上の機微まで、しっかりと捉えきった表現なのである。ただ、6曲目の邦題は〈雪の上の足あと〉が通例だが、私は〈雪の上の足どり〉としたい。沈みこむような足をようやっと抜きながら歩んでゆく旅人の様子なのだから。
*CDランダム5枚*
CD関連記事 ランダム5件
- 【CD評】「やさしい訴え ラモー作品集」評・阿部崇(フランス文学者)
- 【関連記事】ドビュッシー: 「海」、ファリャ: 「スペインの庭の夜」、グレインジャー: 「緑の茂み」(東京新聞、中日新聞 2021年2月8日付夕刊)
- 【関連イベント】『6人組誕生!』CD発売記念 ミニ・コンサート&サイン会
- 【インタビュー】常に「耳に心地よい音楽」を唱えた作曲家ドビュッシーと、パリの芸術家との交友(Webマガジン ONTOMO)
- 【CD評】「花のアルバム」(ぶらあぼ2022年1月号)
Pick Up!
CDのご注文
サイン入りCDをご希望の方
ご希望の方には、青柳いづみこサイン入りのCDをお送り致します。
ご注文フォームに必要事項をご記入の上お申し込みください。
お支払い方法:郵便振替