【CD評】「ドビュッシーの夢」(レコード芸術 2018年6月号)《特選盤》濵田滋郎

【推薦】今月、2人の若いアーティストと共に、好企画かつ監修のアルバム『ドビュッシーの墓』を公にした青柳いづみこが、ここにさらにもう1枚、こちらは彼女のソロ・アルバムとなる『ドビュッシーの夢』を出し、没後100周年を迎えた楽匠への敬慕・鑚仰の念を高めている。曲目は、CD後段に《前奏曲集》第1巻全12曲を置き、前半はドビュッシーが劇付随音楽のかたちで書いた《聖セバスティアンの殉教》(カプレによるピアノ独奏版)6曲、初期の作《夢》(なかなかの佳作に思えるが、ドビュッシー自身はその価値を認めなかったという)、そしてドビュッシーに敬意を抱いた一人、コダーイの作品で《ドビュッシーの主題による瞑想曲》。この前半は興味を惹くプログラムではあるが、《聖セバスティアンの殉教》の音楽は、ピアノ・ソロになると(筆者の耳には)あまり魅力的な楽曲とは聞こえない。対して、《前奏曲集》の博してきた名声は、やはりだてではない。加えて青柳いづみこの演奏が第1曲から第12曲まで文字どおりすべてにわたって、この人ならではの周到な濃(こま)やかさを息づいており、間然とするところもない。たんにムードがある、と言うにとどまらず、楽曲それぞれに、ドビュッシーの意図した構造上、デザイン上の機微まで、しっかりと捉えきった表現なのである。ただ、6曲目の邦題は〈雪の上の足あと〉が通例だが、私は〈雪の上の足どり〉としたい。沈みこむような足をようやっと抜きながら歩んでゆく旅人の様子なのだから。

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