【書評】「ピアニストは指先で考える」日本経済新聞 2007年6月13日夕刊 評・井上章一

ショパンのピアノ曲は黒鍵の使用頻度が高い。ディミニッシュコード(減7)のアルペジオがよくつかわれる。指をのばして鍵盤へむかうショパンにはそれが楽だった。中指と薬指の分離にやや難のあったことも、こうした曲づくりにつながったかもしれない。

そして、中指と薬指で腕をささえれば、ショパンの曲はひきやすくなる。楽曲のつくりから、作曲者の腕と指へ想いをはせ、演奏のヒントにする。曲の解釈を、おぎなっていく。肉体的な条件と曲のつながりが、この本ではさまざまな角度から、教われる。

ラヴェルをひく時は、指をまげたほうがいい。ドビュッシーは、のばすほうがよく聞こえる。さらに、やや高めの椅子へ腰をかけたほうが、ドビュッシーの音は美しくひびきやすい。リストは、腕をまっすぐのばす奏法がむいている。

よほどの音楽通でも、こういうところまでは、なかなかわかるまい。その点、筆者はさすがに現役のピアニストである。本職ならではの知見が、ここにはちりばめられている。ピアノ学習者は必読。門外漢でも、プロの奥深い世界がかいま見え、たのしめる。

ピアニストは指先で考える(単行本)
書籍詳細▶

*書籍 ランダム5冊*

新メルド日記
書籍紹介TOP

書籍関連 最新5件

Pick Up!

書籍のご注文

サイン入り書籍をご希望の方

ご希望の方には、青柳いづみこサイン入りの書籍をお送り致します。
ご注文フォームに必要事項をご記入の上お申し込みください。
お支払い方法:郵便振替

Top